喫煙は認知症のリスクである

喫煙は認知症のリスクである_e0156318_10134935.jpg喫煙と認知症の関係において重要な報告と思われる。

Heavy Smoking in Midlife and Long-term Risk of Alzheimer Disease and Vascular Dementia
Arch Intern Med. 2011;171(4):333-339


背景
 喫煙は生命を脅かす様々な病気の危険因子である。
 しかしながら、認知症との関係については議論がある。
 この研究の目的は、喫煙とAlzheimer病、脳血管性
 認知症との関連性を調べることである。

方法:
 1978~85年の間に健康診断に参加した北カルフォルニアの50~60歳の
 33108人のうち、1994年に生存し、引き続きこのヘルスケアシステム会員だった
 21123人を登録。医療記録に基づき、1994年1月1日から2008年7月31日までの
 認知症、Alzheimer病、脳血管性認知症の診断の有無を検索。
 健康診断時のアンケートにおける1日喫煙量により、喫煙量0.5箱未満、
 0.5~1箱、1~2箱、2箱超に分類。

結果:
 平均追跡期間23年において、認知症と診断されたのは5367人(25.4%)であった。 
 そのうち1136人がAlzheimer病、416人が脳血管性認知症と診断されていた。
 年齢、性別、人種等で調整した多変量Cox比例ハザードモデルを用い、
 中年期の喫煙と認知症の関係を調べたところ、
 1日あたり2箱を超える喫煙者では、非喫煙者に比べ、認知症の調整HRは
 2.14(95%CI1.65-2.78)、Alzheimer病は2.57(1.63-4.03)、
 脳血管性認知症は2.72(1.20-6.18)と、有意なリスク上昇がみられた。
 1日あたり1~2箱の喫煙者も、認知症の調整HR1.44(1.26-1.64)と有意で、
 Alzheimer病ではHR1.18(0.92-1.52)、脳血管性認知症1.42(0.95-2.13)
 と、リスク上昇傾向がみられた。
 1日あたり0.5~1箱の群においても、認知症のリスクは1.37(1.23-1.52)と
 有意であった。Alzheimer、脳血管性認知症は有意差がみられなかった。
 過去の喫煙者、1日あたり0.5箱未満の喫煙者は、いずれの評価項目にも
 差がみられなかった。

結論:
 この大規模コホート試験において、中年期にヘビースモーカーであった場合
 その後の認知症リスクは、非喫煙者の2倍を超える。
by otowelt | 2011-03-22 07:07 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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