COPDへのチオトロピウムミスト吸入製剤により死亡リスク上昇の可能性

このスタディ、正直かなり度肝を抜かれたが、
結構内容が難しいので、特に解析のところは全然読み込んでいない。
スピリーバレスピマットはたまに処方することもあるので
このスタディの結果は気になる。

”ミスト吸入”という製剤形態に問題があるのではないかとの指摘。

Mortality associated with tiotropium mist inhaler in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials
BMJ 2011;342:d3215


目的:
 チオトロピウムミスト吸入をCOPD患者に用いることの
 死亡リスクについてシステマティックレビューをおこなう。

方法:
 COPDにおいて、チオトロピウムミスト吸入製剤(Respimat Soft Mist Inhaler,
 Boehringer Ingelheim)とプラセボを比較したランダム化試験を
 レビュー。治療期間は30日以上とし、死亡データを抽出し
 相対リスクを評価した。

結果:
 5のランダム化試験を検討対象としたところ、
 チオトロピウムミスト吸入は有意に死亡率リスク増加と相関した 
  (90/3686 v 47/2836; RR1.52, 95%CI, 1.06 to 2.16;
 P=0.02; I2=0%)。また、チオトロピウムミスト吸入10µg
 (RR2.15, 1.03 to 4.51; P=0.04; I2=9%) および5µg
 (RR1.46, 1.01 to 2.10; P=0.04; I2=0%) のいずれも
 有意に死亡率リスク増加と相関した。
 ランダム効果モデルを使用した5試験fixed effect analysisの感度では、
 変化はみられなかった(RR1.45, 1.02 to 2.07; P=0.04)ものの、
 1年間の期間における3試験に限定しても、RRは1.50, 1.05 to 2.15であり
 他プログラムからのチオトロピウムミスト吸入への追加データを加味しても
 RRは1.42, 1.01 to 2.00であった。
COPDへのチオトロピウムミスト吸入製剤により死亡リスク上昇の可能性_e0156318_1648448.jpg
結論:
 このメタアナリシスによれば、チオトロピウムミスト吸入をCOPD患者に
 おこなうことは、52%の死亡リスク上昇をもたらす可能性がある。
by otowelt | 2011-06-15 12:08 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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