疥癬の治療
2011年 10月 01日
イベルメクチンについて勉強する機会があったため、
疥癬治療を復習する。
疥癬診療ガイドライン(日皮会誌:117, 2007)
●疥癬について
疥癬は、疥癬虫:ヒゼンダニがヒトの皮膚角層内に
寄生することで発症する、激しい痒みが特徴の皮膚疾患。
直接接触することによって、ヒトヒト感染する。
●皮膚疾患とイオウの歴史
温泉の効能に皮膚病と書いてあるのは、
硫黄成分に弱いヒゼンダニを退治する意味合いがある。
江戸の皮膚病の半数は疥癬だったこともあり、
その名残がいまだに温泉に残っているとされている。
●疥癬の好発部位
顔・首以外の全身に発症する。しかしながら、手や陰部、臀部
が好発部位であり、特に手の角層で疥癬トンネル(burrow)
(直径0.4×5mm程度のトンネル)が観察されることがあり
病理学的に成虫が観察可能である。
トンネル部位から強く検体を採取、KOHに溶かして鏡検すると
成虫はメス0.4mm、オス0.3mm程度で観察可能。
虫卵がみつかることもある。
●角化型(ノルウェー)疥癬の移行に注意
疥癬の診断ができずにステロイド外用療法を行っていると、
重症型の角化型疥癬(hyperkeratotic scabies)
別名ノルウェー疥癬:Norwegian scabiesに移行する。
牡蠣の殻の様に重積した角化増殖が、
手足、臀部、肘など摩擦部位に生じ、
紅皮症にいたる。通常の疥癬では、メス虫体が5匹程度だが、
ノルウェー疥癬では100万匹単位である。
●治療
イベルメクチン錠(ストロメクトール)200μg/kgを1回経口投与する。
60kgなら4錠分1(1錠3mg)。
重症型では初回投与後、1~2週間以内に鏡検を含めて
効果を確認のうえ、2回目の投与を行うこともある。
(1回目のイベルメクチン錠の投与で幼虫や成虫は死滅するが
虫卵は生き残る。虫卵を最終的に駆除するべく、2回目の
投与は卵が孵化して1週間後に行うものとされている)
※イベルメクチンは脂溶性薬物で、脂肪食によりAUCが
空腹時の2.6倍に上昇するため、空腹時に服用するのが望ましい。
日局イオウ・サリチル酸・チアントール軟膏がよく軟膏として
使用されるが、クロタミトン(オイラックス)も使用される。
安息香酸ベンジルとγ-BHCを使用することもある。
γ-BHC軟膏は皮膚から吸収されるとα体となって肝蓄積による
発癌性があるため、原則として6時間で洗い流すようにする。
オイラックスは24 時間で洗い流し、5 日間繰り返せばよい
とされているが、実際には10~14 日間程度の塗布が必要。
●イベルメクチンの作用機序
筋細胞及び神経細胞に存在するグルタミン酸作動性
クロライドチャンネルに選択的かつ高い親和性をもって結合し、
細胞膜の透過性を上昇させ、神経・筋細胞の過分極が生じ
その結果寄生虫が麻痺を起こす。
バルビツール系やベンゾジアゼピン系、バルプロ酸ナトリウム
などのGABA の作用を増強する薬剤との併用には
その作用が増強する可能性があるため、注意が必要。
●感染制御
感染制御で問題になるのは、角化型疥癬のときである
通常型疥癬のときは標準予防策のみでよいとされている。
角化型疥癬の介護、看護、診療にはディスポーザブル手袋
ガウン、キャップを使用する。原則個室隔離とし、
面会入室禁止とする。
集団発生した場合は、第一に施設または病棟内の全患者と
職員の皮膚科検診を行う。潜伏期間を考慮して
皮膚科検診は繰り返し行う。発症者は病型に応じた治療を行う。
感染後直ちに症状が出現するわけではなく、
約1~ 2カ月間の潜伏期間(無症状期間)があるため
集団発生の際には注意が必要である。
疥癬治療を復習する。
疥癬診療ガイドライン(日皮会誌:117, 2007)
●疥癬について
疥癬は、疥癬虫:ヒゼンダニがヒトの皮膚角層内に
寄生することで発症する、激しい痒みが特徴の皮膚疾患。
直接接触することによって、ヒトヒト感染する。
●皮膚疾患とイオウの歴史
温泉の効能に皮膚病と書いてあるのは、
硫黄成分に弱いヒゼンダニを退治する意味合いがある。
江戸の皮膚病の半数は疥癬だったこともあり、
その名残がいまだに温泉に残っているとされている。
●疥癬の好発部位
顔・首以外の全身に発症する。しかしながら、手や陰部、臀部
が好発部位であり、特に手の角層で疥癬トンネル(burrow)
(直径0.4×5mm程度のトンネル)が観察されることがあり
病理学的に成虫が観察可能である。
トンネル部位から強く検体を採取、KOHに溶かして鏡検すると
成虫はメス0.4mm、オス0.3mm程度で観察可能。
虫卵がみつかることもある。
●角化型(ノルウェー)疥癬の移行に注意
疥癬の診断ができずにステロイド外用療法を行っていると、
重症型の角化型疥癬(hyperkeratotic scabies)
別名ノルウェー疥癬:Norwegian scabiesに移行する。
牡蠣の殻の様に重積した角化増殖が、
手足、臀部、肘など摩擦部位に生じ、
紅皮症にいたる。通常の疥癬では、メス虫体が5匹程度だが、
ノルウェー疥癬では100万匹単位である。
●治療
イベルメクチン錠(ストロメクトール)200μg/kgを1回経口投与する。
60kgなら4錠分1(1錠3mg)。
重症型では初回投与後、1~2週間以内に鏡検を含めて
効果を確認のうえ、2回目の投与を行うこともある。
(1回目のイベルメクチン錠の投与で幼虫や成虫は死滅するが
虫卵は生き残る。虫卵を最終的に駆除するべく、2回目の
投与は卵が孵化して1週間後に行うものとされている)
※イベルメクチンは脂溶性薬物で、脂肪食によりAUCが
空腹時の2.6倍に上昇するため、空腹時に服用するのが望ましい。
日局イオウ・サリチル酸・チアントール軟膏がよく軟膏として
使用されるが、クロタミトン(オイラックス)も使用される。
安息香酸ベンジルとγ-BHCを使用することもある。
γ-BHC軟膏は皮膚から吸収されるとα体となって肝蓄積による
発癌性があるため、原則として6時間で洗い流すようにする。
オイラックスは24 時間で洗い流し、5 日間繰り返せばよい
とされているが、実際には10~14 日間程度の塗布が必要。
●イベルメクチンの作用機序
筋細胞及び神経細胞に存在するグルタミン酸作動性
クロライドチャンネルに選択的かつ高い親和性をもって結合し、
細胞膜の透過性を上昇させ、神経・筋細胞の過分極が生じ
その結果寄生虫が麻痺を起こす。
バルビツール系やベンゾジアゼピン系、バルプロ酸ナトリウム
などのGABA の作用を増強する薬剤との併用には
その作用が増強する可能性があるため、注意が必要。
●感染制御
感染制御で問題になるのは、角化型疥癬のときである
通常型疥癬のときは標準予防策のみでよいとされている。
角化型疥癬の介護、看護、診療にはディスポーザブル手袋
ガウン、キャップを使用する。原則個室隔離とし、
面会入室禁止とする。
集団発生した場合は、第一に施設または病棟内の全患者と
職員の皮膚科検診を行う。潜伏期間を考慮して
皮膚科検診は繰り返し行う。発症者は病型に応じた治療を行う。
感染後直ちに症状が出現するわけではなく、
約1~ 2カ月間の潜伏期間(無症状期間)があるため
集団発生の際には注意が必要である。
by otowelt
| 2011-10-01 17:55
| 感染症全般