極度の肥満であってもICUでの死亡率は上昇しないが、人工呼吸器装着期間・在室日数は増加

過度な肥満でもアウトカムは悪化しなかった、という論文。
サブセットデータそのものでまた論文が書けそうな気がする。
"unbelievable" extreme obesity (BMI≧60) and
Outcomes in Critically Ill Patientsとか。

Jenny L. Martino, et al.
Extreme Obesity and Outcomes in Critically Ill Patients
CHEST 2011; 140(5):1198–1206


背景:
 近年の文献によれば、集中治療を要する肥満患者では
 通常体重の患者に比べて臨床アウトカムを悪化させることはないとされている。
 しかしながら、極度の肥満(BMI≧40 kg/m 2 )については
 まだよくわかっていない。極度の肥満がICUの臨床アウトカムに
 影響を与えるかどうか考察した。

方法:
 われわれは、多施設共同の国際臨床試験を実施し
 2007年から2009年までに33ヶ国の355のICUにおいて調査をおこなった。
 18歳以上の成人で人工呼吸器を装着しICUに72時間をこえて入室
 したものを登録した。Cox比例ハザードモデルを用い、
 正常体重患者と過度な体重患者を
 人工呼吸装着期間、ICU在室日数、在院日数、60日死亡率について
 比較することとした。

結果:
 8813人の患者が解析され、3490人が正常体重(BMI18.5-24.9 kg/m 2 )、
 348人がBMI 40 to 49.9 kg/m 2、118人がBMI 50 to 59.9 kg/m 2、
 58人がBMI≧60 kg/m 2であった。補正なしの解析では
 極度の肥満は死亡率を改善した(OR for death, 0.77; 95% CI, 0.62-0.94)
 が、交絡因子で補正すると有意な差はみられなかった。
 しかしながら、生存者における補正後の解析では
 極度の肥満は人工呼吸器装着期間、ICU在室日数の延長を認めた。
極度の肥満であってもICUでの死亡率は上昇しないが、人工呼吸器装着期間・在室日数は増加_e0156318_11115315.jpg

結論:
 極度の肥満は、正常体重と比べてICUのアウトカムを悪化させるものではないが
 BMI40を超える場合、人工呼吸器装着期間とICU在室日数の延長と
 関連がみられた。
by otowelt | 2011-11-02 11:13 | 集中治療

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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