嚢胞性胸腺腫(cystic thymoma)
2012年 01月 21日
・嚢胞性胸腺腫(cystic thymoma)
上前縦隔の嚢胞性病変では、胸腺嚢胞、心膜嚢胞、嚢胞性奇形腫などが
鑑別疾患に入るが、嚢胞性胸腺腫(cystic thymoma)も
呼吸器科医としては知っておきたい鑑別である。
この疾患はしばしば増大する傾向にある。
胸腺腫で嚢胞性変化があるものは全体の40%にみられるが、
腫瘍全体が嚢胞状形態をきたすcysticthymomaはきわめてまれ。
cystic thymomaの基準として、以下のものがある。
①嚢胞壁内に未熟小型リンパ球と網目状上皮細胞が混在増殖
しており、嚢胞壁の肥厚がみられること
②小血管周囲にリンパ球を含むperivascular spaceがあり
リンパ球成分が豊富な腫瘍内に、リンパ球がまばらで
正常胸腺髄質に似た領域がみられる(foci of medullary
differentiation)こと
③嚢胞壁に上皮形成を欠くこと
Suster S,Rosai J.Cysticthymomas.A clinicopathologic study of ten cases. Cancer 1992; 69: 92-7.
嚢胞内容物は、ほとんど血液成分を混じた出血巣や壊死物質。
内部に出血壊死がみられており、これが嚢胞性変化をきたして
いるものと考えられている。
内部には漿液性の液体がみられるという報告もあり
症例が少ないため、現時点では内容物に関するコンセンサスは
得られていない。
Rieker JR, et al. Cystic thymoma.Pathol Oncol Res 2005;11:57-60.
もともと存在していた胸腺嚢胞の嚢胞壁に胸腺腫が発生した後、
嚢胞壁をあたかも置き換えるように増殖すると、cystic thymomaのように
急速に増大する説明になるのではないかとも考えられている。
川口庸ら. 嚢胞状形態を呈した胸腺腫(いわゆるcysticthymoma)の1切除例. 日呼外会誌, 2011; 25: 79-83.
文責"倉原優"
上前縦隔の嚢胞性病変では、胸腺嚢胞、心膜嚢胞、嚢胞性奇形腫などが
鑑別疾患に入るが、嚢胞性胸腺腫(cystic thymoma)も
呼吸器科医としては知っておきたい鑑別である。
この疾患はしばしば増大する傾向にある。
胸腺腫で嚢胞性変化があるものは全体の40%にみられるが、
腫瘍全体が嚢胞状形態をきたすcysticthymomaはきわめてまれ。
cystic thymomaの基準として、以下のものがある。
①嚢胞壁内に未熟小型リンパ球と網目状上皮細胞が混在増殖
しており、嚢胞壁の肥厚がみられること
②小血管周囲にリンパ球を含むperivascular spaceがあり
リンパ球成分が豊富な腫瘍内に、リンパ球がまばらで
正常胸腺髄質に似た領域がみられる(foci of medullary
differentiation)こと
③嚢胞壁に上皮形成を欠くこと
Suster S,Rosai J.Cysticthymomas.A clinicopathologic study of ten cases. Cancer 1992; 69: 92-7.
嚢胞内容物は、ほとんど血液成分を混じた出血巣や壊死物質。
内部に出血壊死がみられており、これが嚢胞性変化をきたして
いるものと考えられている。
内部には漿液性の液体がみられるという報告もあり
症例が少ないため、現時点では内容物に関するコンセンサスは
得られていない。
Rieker JR, et al. Cystic thymoma.Pathol Oncol Res 2005;11:57-60.
もともと存在していた胸腺嚢胞の嚢胞壁に胸腺腫が発生した後、
嚢胞壁をあたかも置き換えるように増殖すると、cystic thymomaのように
急速に増大する説明になるのではないかとも考えられている。
川口庸ら. 嚢胞状形態を呈した胸腺腫(いわゆるcysticthymoma)の1切除例. 日呼外会誌, 2011; 25: 79-83.
文責"倉原優"
by otowelt
| 2012-01-21 23:34
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