明治乳業 ヨーグルト R-1 (1073R-1) についての勉強
2012年 02月 02日
明治乳業のヨーグルトである「R-1」がインフルエンザウイルス感染に対して
予防効果があると大人気になっている。市販された大人気食品なので、
できるだけエビデンスに関する批判も推奨もせずに
今朝個人的な勉強したことをメモとして記載しておきたい。
・マウスでの研究
多糖体産生のブルガリア菌(OLL1073R-1株)ヨーグルト
(0.4 ml or 0.3 ml)を24日間マウスに投与した試験がある。
エンドポイントである21日目に、マウス馴化インフルエンザウイルス
A/PR/8/34 (H1N1)(2×LD50, 20μl)を鼻から接種し。
ヨーグルトを摂取していたマウスは、ヨーグルトを摂取しなかったマウスと
比較してインフルエンザウイルス感染後の生存日数が有意に延長。
1073R-1乳酸菌使用ヨーグルト(0.4ml/body/day):p=0.0018 (n=9)
1073R-1乳酸菌EPS(20μg/body/day):p=0.0648 (n=9)
マウスの研究である上にn=9と少ない状況でのsurvivalをKaplan-Meier法で
Web上に表示しているが、このデータが信頼性があるかと問われれば、
ややハテナマークがつくかもしれない。またヨーグルト使用の
場合だけ有意差が出ており(それでもマウスの半数以上は死亡)、
1073R-1乳酸菌EPSでは有意差が出ておらずマウスはほぼ全滅だった。
(該当ジャーナルは見つけられなかった)
・ヒトでの研究
Seiya Makino, et al.
Reducing the risk of infection in the elderly by dietary intake of yoghurt
fermented with Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1
British Journal of Nutrition 2010, 104, 998-1006
明治乳業が提示している論文は上記のもの。
山形県舟形町70~80歳高齢者57名、
佐賀県有田町60歳以上高齢者85名を対象に研究を実施している。
1073R-1乳酸菌ヨーグルト群(90g/day)
牛乳群(100ml/day)のいずれかにランダムに割り付けし、
8、12週間継続して経口摂取をおこなった。
エンドポイントとして提示されているのは、NK活性と風邪症状アンケート等。
1073R-1乳酸菌ヨーグルト群は牛乳群に比べて、佐賀OR0.44、
山形OR0.29。Mantel-Haenszel法の統合でOR0.39であった(p=0.019)。
風邪症状等のアンケートによる臨床的アウトカムの改善は
OR 0.29(P=0.103)と論文中に記載されている。
→このBritish Journal of Nutritionは栄養学では
IF/EFともにある程度上位に入るジャーナルなのだが(IF3、EF0.03)、
NK活性と風邪症状アンケートという介入試験アウトカムは妥当だろうか?
もう少し調べてみたい。
小児において
山形県舟形町:町内の全保育園児、小中学生544名(6校)
佐賀県有田町:町内の全保育園・幼稚園児、小中学生2468名(16校)
で上記ヨーグルトを摂取するよう奨励し、
園児・児童・生徒の欠席率変動・ウイルス感染など健康状態に対する
調査(聞き取り調査)を実施(1年間)。
主なアウトカムとして提示されているのは、
舟形町における6ヶ月後(2010年12月)のインフルエンザ発症がゼロであること、
有田町における学級閉鎖がゼロであること。
ただ、一番大事な流行期における2011年12月~2月のデータが
どうなっているのか会社のプレリリースからは不明である。
(該当ジャーナルは見つけられなかった)
薬剤に関しては、
「xxが●●の予防に効果がありますよ」ということを薬効として
表示するためには、少なくとも疫学的な質の高い研究が必要になる。
エンドポイントに到達しなくても中間解析やエンドポイントパラメータを
模索して有効性が確認されるものをどうにか探す手法も散見されるので、
臨床医は注意が必要である。また、薬剤と異なり健康食品・サプリメントの
類はどうしてもバイアスが多くなるのは言わずもがなである。
予防効果があると大人気になっている。市販された大人気食品なので、
できるだけエビデンスに関する批判も推奨もせずに
今朝個人的な勉強したことをメモとして記載しておきたい。
・マウスでの研究
多糖体産生のブルガリア菌(OLL1073R-1株)ヨーグルト
(0.4 ml or 0.3 ml)を24日間マウスに投与した試験がある。
エンドポイントである21日目に、マウス馴化インフルエンザウイルス
A/PR/8/34 (H1N1)(2×LD50, 20μl)を鼻から接種し。
ヨーグルトを摂取していたマウスは、ヨーグルトを摂取しなかったマウスと
比較してインフルエンザウイルス感染後の生存日数が有意に延長。
1073R-1乳酸菌使用ヨーグルト(0.4ml/body/day):p=0.0018 (n=9)
1073R-1乳酸菌EPS(20μg/body/day):p=0.0648 (n=9)
マウスの研究である上にn=9と少ない状況でのsurvivalをKaplan-Meier法で
Web上に表示しているが、このデータが信頼性があるかと問われれば、
ややハテナマークがつくかもしれない。またヨーグルト使用の
場合だけ有意差が出ており(それでもマウスの半数以上は死亡)、
1073R-1乳酸菌EPSでは有意差が出ておらずマウスはほぼ全滅だった。
(該当ジャーナルは見つけられなかった)
・ヒトでの研究
Seiya Makino, et al.
Reducing the risk of infection in the elderly by dietary intake of yoghurt
fermented with Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1
British Journal of Nutrition 2010, 104, 998-1006
明治乳業が提示している論文は上記のもの。
山形県舟形町70~80歳高齢者57名、
佐賀県有田町60歳以上高齢者85名を対象に研究を実施している。
1073R-1乳酸菌ヨーグルト群(90g/day)
牛乳群(100ml/day)のいずれかにランダムに割り付けし、
8、12週間継続して経口摂取をおこなった。
エンドポイントとして提示されているのは、NK活性と風邪症状アンケート等。
1073R-1乳酸菌ヨーグルト群は牛乳群に比べて、佐賀OR0.44、
山形OR0.29。Mantel-Haenszel法の統合でOR0.39であった(p=0.019)。
風邪症状等のアンケートによる臨床的アウトカムの改善は
OR 0.29(P=0.103)と論文中に記載されている。
→このBritish Journal of Nutritionは栄養学では
IF/EFともにある程度上位に入るジャーナルなのだが(IF3、EF0.03)、
NK活性と風邪症状アンケートという介入試験アウトカムは妥当だろうか?
もう少し調べてみたい。
小児において
山形県舟形町:町内の全保育園児、小中学生544名(6校)
佐賀県有田町:町内の全保育園・幼稚園児、小中学生2468名(16校)
で上記ヨーグルトを摂取するよう奨励し、
園児・児童・生徒の欠席率変動・ウイルス感染など健康状態に対する
調査(聞き取り調査)を実施(1年間)。
主なアウトカムとして提示されているのは、
舟形町における6ヶ月後(2010年12月)のインフルエンザ発症がゼロであること、
有田町における学級閉鎖がゼロであること。
ただ、一番大事な流行期における2011年12月~2月のデータが
どうなっているのか会社のプレリリースからは不明である。
(該当ジャーナルは見つけられなかった)
薬剤に関しては、
「xxが●●の予防に効果がありますよ」ということを薬効として
表示するためには、少なくとも疫学的な質の高い研究が必要になる。
エンドポイントに到達しなくても中間解析やエンドポイントパラメータを
模索して有効性が確認されるものをどうにか探す手法も散見されるので、
臨床医は注意が必要である。また、薬剤と異なり健康食品・サプリメントの
類はどうしてもバイアスが多くなるのは言わずもがなである。
by otowelt
| 2012-02-02 07:45
| 内科一般