気胸の診断における超音波のメタアナリシス

気胸におけるエコーについて知っておかねばならないサインは
以下の通りである。

1.lung slidingの消失
呼吸運動に伴う胸膜の動きを診ているもので、
正常であれば横にスライドしている像が確認できる。
気胸があるとlung slidingが消失する。
アニメーション動画などで見ないとわからないと思う。
YOUTUBEにたくさん転がっているので確認すべし。

2.commet tail artifactの消失
正常では胸膜から下に向かって伸びるエコー上のアーチファクトが
確認できることがあるが、気胸ではこれが消失する。
コンソリデーション等がある場合、増強すると言われており
病的肺の診断にも用いられる。
気胸の診断における超音波のメタアナリシス_e0156318_7244952.jpg
※B-line
comet tail artifactのことをB-lineとも呼ぶことがあるが
これは、B-lineが3本以上・間隔が7mm以内といった
密な所見のときに間質性の疾患(肺水腫)などを疑うと
いう場面で用いられる用語である。なお、皮下にできる
B-line likeのものは、E-lineと呼ぶ。これは皮下気腫を意味する。
気胸の診断における超音波のメタアナリシス_e0156318_7251876.jpg
3.M-modeにおけるseashore sign(sandy pattern)の消失
M-modeでは肺実質は呼吸性変動でsandy patternになる。
これはあたかも波が打ち寄せる砂浜のように見えるため
seashore signとも呼ばれる。気胸の場合、
seashore signの特徴であるsandy patternが消失する。
気胸の診断における超音波のメタアナリシス_e0156318_7254661.jpg
※A-line
A-lineは肺内にできるB-lineと直交する線のことで、
1.のsea shore signと平行にできる肺内のエコーシャドウ
のことである。正常でも観察されるが、lung slidingがあり
増強しているときは気管支喘息やCOPDなどを疑う。
lung slidingがないのに増強しているときは、気胸を疑う。

過去にエコーによる気胸診断についてはメタアナリシスを紹介した。
気胸診断において超音波は感度特異度ともに高い
今月のCHESTから、気胸診断のエコーのメタアナリシスがまた出ていた。
Discussionにも記載されていたが、このメタアナリシスは
多くが外傷救急における論文を引用したものなので、
基本的に仰臥位レントゲンとエコーの話であることに注意したい。
なお、出版バイアス等についてのDiscussionがされていない。

Khaled Alrajhi, et al.
Test Characteristics of Ultrasonography for the Detection of Pneumothorax
A Systematic Review and Meta-analysis
CHEST 2012; 141(3):703–708


背景:
 気胸は潜在的に生命にかかわる病態である。CT検査は診断において標準的な
 位置づけであるが、胸部レントゲンは気胸の診断を除外する目的でも
 よく使われている。われわれは、臨床的に気胸と疑われ
 CTを使用したりあるいは脱気を行われた患者における
 エコーと仰臥位レントゲンの検査特性を比較した。

方法:
 われわれはMEDLINE、EMBASEの英語文献を検索した。
 2人の独立した研究者が適格論文をレビューするために
 標準化をおこなった。抽出したデータの質評価は、診断精度研究質評価ツール
 (QUADAS)の判定基準に基づいて行われた。
 われわれはメタナアリシス実施前に
 試験選択においてκ係数による一致度を計算した。

結果:
 われわれは570の論文をレビューし、21をフルレビューとして選択した
 (κ, 0.89)。8つの論文(合計1048患者)が適格基準を満たした(κ, 0.81)。
 1つ以外の全てのスタディは、エコーを使用しており
 気胸の除外としてはlung slidingおよびcomet tailを使用していた。
 胸部画像所見はエコーをおこなわれた1048人中864人で有用であった。
 エコーは気胸に同定において90.0%の感度(95% CI, 86.5-93.9)と
 98.2%の特異度(95% CI, 97.0-99.0)であった。
 胸部画像は50.2%の感度(95% CI, 43.5-57.0)と
 99.4%の特異度(95% CI, 98.3-99.8)であった。
気胸の診断における超音波のメタアナリシス_e0156318_7263556.jpg

結論:
 気胸同定のためのエコーの使用はきわめてすぐれており
 仰臥位レントゲンよりも有用である。 ベッドサイドで迅速に
 おこなえるエコーは簡便かつ有用な検査であることから
 このスタディは気胸の同定にエコーをルーチンに用いることを
 支持するものである。
by otowelt | 2012-03-07 06:24 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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