ICUにおける、容量監視 vs 圧監視戦略

transpulmonary thermodilutionは、
pulse contour cardiac outputとも呼ばれる。
海外のICUではよく使用されている、PiCCOのことである。
http://intensivecare.hsnet.nsw.gov.au/picco

Trof, Ronald J, et al.
Volume-limited versus pressure-limited hemodynamic management in septic and nonseptic shock
Crit Care Med 2012; 40:–1185


目的:
 結構動態的マネジメントを、心ボリューム負荷の上限を規定する
 方法か、圧上限を規定する方法か、
 ショックで入院した人工呼吸管理中の患者において効果を評価する。

デザイン:
 プロスペクティブランダム化試験

セッティング:
 多施設における混合ICU

患者:
 120人の患者が登録(72人が敗血症性、48人が非敗血症性)された。
 ランダムに、transpulmonary thermodilution (循環動態モニタ)
 に60人、肺動脈カテーテルに60人割り付けた。
 2007年2月から2009年7月まで実施。

介入:
 ・輸液によるボリューム容量負荷上限を規定する群
  transpulmonary thermodilution (PiCCO:循環動態モニタ)
  extravascular lung water:<10 mL/kg
  end-diastolic volume index :<850 mL/m2
 ・肺動脈カテーテルを使用する群
  肺動脈圧:<18–20 mm Hg
 上記はいずれも割り付け72時間後とした。

アウトカム・結果:
 プライマリアウトカムは人工呼吸器非装着日数と
 ICU在室あるいは在院日数とした。セカンダリアウトカムは
 臓器不全と死亡率とした。心合併症がより非敗血症性群において
 高い傾向であった。人工呼吸器非装着日数、在室日数、臓器不全、
 28日死亡率(overall 33.3%)は両群とも同等であった。
 transpulmonary thermodilution群において、 
 人工呼吸器装着日数とICU在室日数、在院日数が非敗血症性群
 において多い傾向にみられた(p = .001)(敗血症群では有意差なし)。

結論:
 血行動態マネジメントをtranspulmonary thermodilutionで行う場合も
 肺動脈カテーテルでおこなう場合も、人工呼吸器非装着日数、ICU在室日数、
 在院日数において影響はみられなかった。非敗血症性ショックにおいて
 ただし、transpulmonary thermodilutionアルゴリズムは
 肺動脈カテーテルアルゴリズムと比較すると
 人工呼吸器装着日数、ICU在室日数の延長をきたした。これは
 心合併症、輸液によるプラスバランスと関連しているのかもしれない。
by otowelt | 2012-03-25 14:22 | 集中治療

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優