喫煙歴が多いCOPDにおいて放射性肺臓炎は概して軽度
2012年 04月 03日
だいたい喫煙というのは呼吸器疾患のリスクになるのだが、
放射性肺臓炎のリスクを軽減させるという結果には驚いた。
ちなみに喫煙が疾患リスクを減らすものとして、
呼吸器内科医としては過敏性肺炎は是非とも知っておきたい。
喫煙により、吸入抗原への抗体反応が弱まるとされている。
Effect of cigarette smoking on the antibody response to inhaled antigens and the prevalence of extrinsic allergic alveolitis among pigeon breeders. Clin Allergy 1985; 15:487.
以下、今回のCHESTの論文。
Atsuya Takeda, et al.
Severe COPD Is Correlated With Mild Radiation Pneumonitis Following Stereotactic Body Radiotherapy
CHEST April 2012 vol. 141 no. 4 858-866
背景:
COPDと肺癌の主たる原因として喫煙がある。
そのため、COPDの患者はしばしば手術不能な肺癌を有している
ことがある。定位放射線療法(SBRT)は、手術不能な早期非小細胞肺癌
の治療において標準的と考えられる。SBRTによるもっとも重篤な毒性は
放射性肺臓炎である。われわれは、SBRT後放射性肺臓炎の予測因子を
解析し、重症COPD患者における放射性肺臓炎の程度と頻度を調べた。
方法:
われわれはレトロスペクティブに265人のSBRTを受けた肺腫瘍患者を
検証した(2005年~2010年の間で、最低フォローアップ期間は6ヶ月)。
GOLD分類と喫煙年数を含め、放射性肺臓炎の予測因子を
単変量および多変量解析で計算した。
放射性肺臓炎はCTCAEversion 3.0で評価した。
grade 1:無症状で放射線的異常のみ。ADLに干渉しない。
grade 2:ADLに干渉しないが、症状がある。
grade 3:症状がありADLに干渉、酸素が適用される。
grade 4:生命に危険があり、人工呼吸器を要する。
grade 5:死亡
結果:
フォローアップ中央期間は19.2ヶ月(range, 6.0-72.0 months)で、
放射性肺臓炎のgrade 0, 1, 2, 3, 4, 5はそれぞれ
101人, 102人, 49人, 12人, 0人, 1人に確認された。
多変量解析により、高いV20, 少ない喫煙歴、高照射線量が
有意なgrade1以上の放射性肺臓炎のリスクであった。
grade2以上に限定すると、高いV20,少ない喫煙歴、肺切除歴が
放射性肺臓炎のリスクであった。重度のCOPD患者における放射性肺臓炎は
通常の肺機能や軽症COPD患者に比べると軽度であった。

ディスカッション:
喫煙後に放射線治療をおこなった肺では
非喫煙者の放射線治療後の肺に比べると、炎症所見が少ない。
具体的には肺胞領域において肥満細胞が100倍、気管支周囲で30倍の
違いがあるといわれている。
Tobacco smoke exposure suppresses radiation-induced infl ammation
in the lung: a study of bronchoalveolar lavage and ultrastructural morphology in the rat . Eur Respir J . 1993; 6( 8):1173 - 1180 .
しかしながら、喫煙は放射性肺臓炎のリスクを上昇させるという
相反する報告もあるため、この論文のみで結論を出すのは早計だろう。
Clinical radiation pneumonitis and radiographic changes after thoracic radiation
therapy for lung carcinoma . Cancer . 1998 ; 82 ( 5 ): 842 - 850 .
結論:
重度のCOPD患者におけるSBRT後の放射性肺臓炎は概して軽症であった。
重喫煙歴は、放射性肺臓炎における強い陰性予測因子であった。
放射性肺臓炎のリスクを軽減させるという結果には驚いた。
ちなみに喫煙が疾患リスクを減らすものとして、
呼吸器内科医としては過敏性肺炎は是非とも知っておきたい。
喫煙により、吸入抗原への抗体反応が弱まるとされている。
Effect of cigarette smoking on the antibody response to inhaled antigens and the prevalence of extrinsic allergic alveolitis among pigeon breeders. Clin Allergy 1985; 15:487.
以下、今回のCHESTの論文。
Atsuya Takeda, et al.
Severe COPD Is Correlated With Mild Radiation Pneumonitis Following Stereotactic Body Radiotherapy
CHEST April 2012 vol. 141 no. 4 858-866
背景:
COPDと肺癌の主たる原因として喫煙がある。
そのため、COPDの患者はしばしば手術不能な肺癌を有している
ことがある。定位放射線療法(SBRT)は、手術不能な早期非小細胞肺癌
の治療において標準的と考えられる。SBRTによるもっとも重篤な毒性は
放射性肺臓炎である。われわれは、SBRT後放射性肺臓炎の予測因子を
解析し、重症COPD患者における放射性肺臓炎の程度と頻度を調べた。
方法:
われわれはレトロスペクティブに265人のSBRTを受けた肺腫瘍患者を
検証した(2005年~2010年の間で、最低フォローアップ期間は6ヶ月)。
GOLD分類と喫煙年数を含め、放射性肺臓炎の予測因子を
単変量および多変量解析で計算した。
放射性肺臓炎はCTCAEversion 3.0で評価した。
grade 1:無症状で放射線的異常のみ。ADLに干渉しない。
grade 2:ADLに干渉しないが、症状がある。
grade 3:症状がありADLに干渉、酸素が適用される。
grade 4:生命に危険があり、人工呼吸器を要する。
grade 5:死亡
結果:
フォローアップ中央期間は19.2ヶ月(range, 6.0-72.0 months)で、
放射性肺臓炎のgrade 0, 1, 2, 3, 4, 5はそれぞれ
101人, 102人, 49人, 12人, 0人, 1人に確認された。
多変量解析により、高いV20, 少ない喫煙歴、高照射線量が
有意なgrade1以上の放射性肺臓炎のリスクであった。
grade2以上に限定すると、高いV20,少ない喫煙歴、肺切除歴が
放射性肺臓炎のリスクであった。重度のCOPD患者における放射性肺臓炎は
通常の肺機能や軽症COPD患者に比べると軽度であった。

喫煙後に放射線治療をおこなった肺では
非喫煙者の放射線治療後の肺に比べると、炎症所見が少ない。
具体的には肺胞領域において肥満細胞が100倍、気管支周囲で30倍の
違いがあるといわれている。
Tobacco smoke exposure suppresses radiation-induced infl ammation
in the lung: a study of bronchoalveolar lavage and ultrastructural morphology in the rat . Eur Respir J . 1993; 6( 8):1173 - 1180 .
しかしながら、喫煙は放射性肺臓炎のリスクを上昇させるという
相反する報告もあるため、この論文のみで結論を出すのは早計だろう。
Clinical radiation pneumonitis and radiographic changes after thoracic radiation
therapy for lung carcinoma . Cancer . 1998 ; 82 ( 5 ): 842 - 850 .
結論:
重度のCOPD患者におけるSBRT後の放射性肺臓炎は概して軽症であった。
重喫煙歴は、放射性肺臓炎における強い陰性予測因子であった。
by otowelt
| 2012-04-03 23:30
| 気管支喘息・COPD