
主にエコーで評価したものなので、
仮説が確実性かどうかは議論の余地がある。
しかしながら、エビデンス未開拓の領域なので
貴重な報告だと思う。
Lorenza Pratali, et al.
Exercise Induces Rapid Interstitial Lung Water Accumulation in Patients With Chronic Mountain Sickness
CHEST 2012; 141(4):953–958
背景:
慢性高山病: chronic mountain sickness (CMS)は
世界の山岳部における主要な健康問題である。
進行した状態では、運動耐容能の低下はしばしば観察されるが
その基礎となるメカニズムはまだよくわかっていない。
最近のエビデンスでは、運動誘発性の肺高血圧はCMSにおいて
顕著に表現されやすい。われわれは、この問題が
肺への水分の集積をきたし、ひいては運動時低酸素血症を
悪化させるかもしれないと仮説をたてた。
患者:
25人のボリビアのCMS男性患者と26人のラパスとその周辺
(3,600-4,000 m)で生まれ育った健常人。
方法:
われわれは、CMS15人、健常人20人において
胸部超音波検査による血管外の肺水分の観察、肺動脈圧、左室機能を
安静時および標高3600m運動時に評価することができた。
※肺間質への水分集積は、ULC(untrasound lung comet)で観察した。
※運動はエルゴメーター(Ergoline 900EL; Ergoline Company)を使用
結果:
CMS15人中14人において、高い標高での運動は
急速に肺間質に水分の集積をきたし、既存の低酸素血症を
さらに悪化させた。それに対して健常人の高地運動は
20人中16人において水分の集積が観察されず( P=.002 vs CMS)、
動脈血酸素化の変化もみられなかった。CMS患者における
健常人に比べて、CMS患者では
運動誘発性の肺間質水分集積と低酸素血症は
肺動脈圧に2倍以上の差をつけて観察されたた。( P< .001)。
しかし、左室機能障害ははっきりとしなかった。
CMS患者における酸素吸入は運動誘発性肺高血圧を
劇的に改善させ( P< .01)、肺間質の水分集積も改善させた( P< .05)。

われわれの知見によれば、この研究は
高地における運動が肺間質への水分集積と低酸素血症をきたす
という最初の直接的なエビデンスとなると考えている。