末期腎不全患者におけるインフルエンザワクチンは効果が乏しい
2012年 04月 18日
末期腎不全(ESRD)の患者におけるインフルエンザ合併症と死亡リスクは
健常人より高いとされ、同ワクチン接種が推奨されている。
透析患者は、インフルエンザワクチン反応性が低いものの、
過去の研究では、透析患者においても抗体価上昇があると報告されている。
Discussionにも述べられているが、”投与量が不足している可能性”も
じゅうぶん考えられる。
Leah J. McGrath, et al.
Influenza Vaccine Effectiveness in Patients on Hemodialysis
An Analysis of a Natural Experiment
Arch Intern Med. 2012;172(7):548-554
背景:
インフルエンザワクチンがESRD患者のインフルエンザ死亡と合併症を
どのくらい予防できるのかよくわかっていない。vaccine effectiveness
の推定が、観察研究では難しいためである。
方法:
アメリカの全ESRD患者の情報を収集している
US Renal Data Systemに登録された患者のうち、
血液透析を継続的に受けている人々について、一致年、非一致年の
インフルエンザワクチン接種の有無と、インフルエンザ様疾患、
インフルエンザまたは肺炎による入院、全死因死亡の有無を調査した。
インフルエンザ型が一致しなかった1997~1998年を”非一致年”に設定、
一致した1998~1999年、1999~2000年、2001~2002年を”一致年”
に設定した。データにより、それぞれの年のワクチン接種群のアウトカムと
非接種群のアウトカムを比べ、ハザード比を算出した。また、
一致年ハザード比を非一致年ハザード比で除して、
ratio of hazard ratio:RHRを算出した。
結果:
いずれの流行期もワクチン接種者は非接種者より少なく、
接種率は50%を下回った。ワクチン接種群と非接種群を比べると、
ワクチンのeffectiveness(%)のそれぞれの流行期平均は、
インフルエンザ様疾患が13%、インフルエンザまたは肺炎による
入院が16%、死亡が30%だった。これらは一致年であろうと非一致年
であろうと同様であった。RHRについては、一致年1998~1999年と
非一致年の1997~1998年の比較では、インフルエンザ様疾患の
調整RHRは1.03(1.00-1.07)、入院1.01(0.97-1.06)、
死亡1.02(0.99-1.06)であった。他の年でも同様の結果であった。
(ワクチン型と流行型が一致していても、3つのアウトカムについて
ワクチンの効果ははっきりしなかった)
型が一致した3流行期のデータからハザード比を算出し、
非一致年の1997~1998年に対する調整RHRを算出すると、
インフルエンザ様疾患1.00(0.98-1.03)、入院0.98(0.95-1.02)、
死亡1.00(0.97-1.03)であった。インフルエンザワクチンの
effectivenessは、インフルエンザ様疾患0%、入院2%、死亡0%。
結論:
ESRD患者に対するインフルエンザワクチンの効果は、
従来考えられていたよりはるかに低い可能性がある。
健常人より高いとされ、同ワクチン接種が推奨されている。
透析患者は、インフルエンザワクチン反応性が低いものの、
過去の研究では、透析患者においても抗体価上昇があると報告されている。
Discussionにも述べられているが、”投与量が不足している可能性”も
じゅうぶん考えられる。
Leah J. McGrath, et al.
Influenza Vaccine Effectiveness in Patients on Hemodialysis
An Analysis of a Natural Experiment
Arch Intern Med. 2012;172(7):548-554
背景:
インフルエンザワクチンがESRD患者のインフルエンザ死亡と合併症を
どのくらい予防できるのかよくわかっていない。vaccine effectiveness
の推定が、観察研究では難しいためである。
方法:
アメリカの全ESRD患者の情報を収集している
US Renal Data Systemに登録された患者のうち、
血液透析を継続的に受けている人々について、一致年、非一致年の
インフルエンザワクチン接種の有無と、インフルエンザ様疾患、
インフルエンザまたは肺炎による入院、全死因死亡の有無を調査した。
インフルエンザ型が一致しなかった1997~1998年を”非一致年”に設定、
一致した1998~1999年、1999~2000年、2001~2002年を”一致年”
に設定した。データにより、それぞれの年のワクチン接種群のアウトカムと
非接種群のアウトカムを比べ、ハザード比を算出した。また、
一致年ハザード比を非一致年ハザード比で除して、
ratio of hazard ratio:RHRを算出した。
結果:
いずれの流行期もワクチン接種者は非接種者より少なく、
接種率は50%を下回った。ワクチン接種群と非接種群を比べると、
ワクチンのeffectiveness(%)のそれぞれの流行期平均は、
インフルエンザ様疾患が13%、インフルエンザまたは肺炎による
入院が16%、死亡が30%だった。これらは一致年であろうと非一致年
であろうと同様であった。RHRについては、一致年1998~1999年と
非一致年の1997~1998年の比較では、インフルエンザ様疾患の
調整RHRは1.03(1.00-1.07)、入院1.01(0.97-1.06)、
死亡1.02(0.99-1.06)であった。他の年でも同様の結果であった。
(ワクチン型と流行型が一致していても、3つのアウトカムについて
ワクチンの効果ははっきりしなかった)
型が一致した3流行期のデータからハザード比を算出し、
非一致年の1997~1998年に対する調整RHRを算出すると、
インフルエンザ様疾患1.00(0.98-1.03)、入院0.98(0.95-1.02)、
死亡1.00(0.97-1.03)であった。インフルエンザワクチンの
effectivenessは、インフルエンザ様疾患0%、入院2%、死亡0%。
結論:
ESRD患者に対するインフルエンザワクチンの効果は、
従来考えられていたよりはるかに低い可能性がある。
by otowelt
| 2012-04-18 07:28
| 感染症全般