ATS 2012:吸入ステロイド使用患者では肺炎随伴性胸水の合併は少ない
2012年 05月 24日

J. Sellares, et al.
Influence Of Long-Term Use Of Inhaled Corticoids On The Development Of Pleural Effusion In Community Acquired Pneumonia
ATS 2012、Session D14, May 23, Abstract 30951
背景:
COPD患者に対する長期間の吸入ステロイド使用は市中肺炎のリスクを高くし、肺炎死亡率を上昇させると考えられている。胸腔内感染症はよくみられる市中肺炎の合併症であり、これも死亡率を上昇させると考えられる。このスタディの目的は、長期間の吸入ステロイド治療が肺炎随伴性胸水の頻度と重症度をと関連するかどうか検証するものである。
方法:
われわれは単施設におけるコホート試験において3602人の連続した市中肺炎患者を登録した。われわれは、臨床的、放射線学的、胸水生化学検査、微生物学的検査を解析した。胸水は、ACCPガイドラインに基づいて分類をおこなった。患者は吸入ステロイドを用いていたかどうか調べ、使用の有無に分けて解析をおこなった。
結果:
659人(18%)が市中肺炎の診断の前に吸入ステロイドを使用していた(COPD: 56%、気管支喘息: 13%, 気管支拡張症: 6%, その他: 25%)。吸入ステロイドによる前治療は有意に肺炎随伴性胸水の頻度と逆相関していた(5% vs. 12%, p<0.001)。年齢、性別、合併症、市中肺炎の重症度を補正した多変量解析においても、吸入ステロイドの前治療と胸水は逆相関[OR 0.42 (95% CI, 0.28-0.64, p<0.001)]。吸入ステロイドはACCPカテゴリー1の胸水貯留と有意に関連(<10mm)(53% vs 30%, p=0.008 )しており、カテゴリー4とは関連性が低かった(empyiema)(3% vs 16%, p=0.05)。また、吸入ステロイド治療は胸水中の高血糖、低蛋白、低LDHと関連していた。肺炎30日死亡率については吸入ステロイドと差はみられなかった。
結論:
吸入ステロイド使用患者における市中肺炎では肺炎随伴性胸水の頻度が減少する。
by otowelt
| 2012-05-24 17:57
| 感染症全般