Clara細胞の発見者:Max Clara

e0156318_9222896.png Clara細胞は、呼吸器内科医だけでなく医療従事者なら誰でも聞いたことがあると思います。Claraというファーストネームの女性ではなく、戦時中にヨーロッパで有名になった男性解剖学者です。処刑された人体を用いたため、一部の医学者からは痛烈に批判を受けたものの、彼の偉業は「細胞」に名を残すほどです。

 Max Clara(1899~1966年)は、オーストリア南チロル地方のボーゼン付近にある田舎の村に生まれました。オーストリアのインスブルックとドイツのライプチヒで医学を学び、1923年にはすでに組織学・発生学の教室に所属していました。

 翌1924年、生まれ育ったボーゼン近くの村の開業医であった父親が急逝したあと、彼は村に戻ってそこで内科医を続けました。臨床の合間をぬって、組織学の研究も続けていました。激務をこなしつつ、イタリアのパドゥア大学で教鞭もふるっていました。

 1935年にドイツのライプチヒ大学で解剖学教室を立ち上げるにあたり、Claraはその教授に就任することとなりました。そして、その教室で2年後にヒトの気管支上皮において分泌細胞を新たに発見したのです。

Clara M. Zur Histobiologie des Bronchalepithels [On the histobiology of the bronchial epithelium.]. Z mikrosk anat Forsch 1937; 41: 321–347.

e0156318_21473124.jpg この分泌機能を有した細胞については、1955年の文献で”Clara細胞”として記録されています。

Policard A, et al. Observations microe´lectroniquessur l’infrastructure des cellules bronchiolaires [Electron microscopic observations on the ultrastructure of bronchiolar cells.]. Les Bronches 1955; 5: 187–196.

 Claraは、当初からナチスと親しい関係にあった事が知られています。少なくとも1935年から1942年までの間は大きな資金援助を受けていた可能性があります。彼は、死刑に処された囚人たちの組織を使用したため、研究は当時から波紋を呼んでいました。

・Clara M. Ueber die Aufgaben und Ziele der Anatomie in unserer Zeit [On the tasks and goals of Anatomy in our time.]. Munchner Medizinische Wochenschrift 1935; 82: 939–942.
・Clara M. Geleitwort. [Preface.] Deutsches Hochschulverzeichnis - Lehrkorper, Vorlesungen und Forschungseinrichtungen 1942; 120:III–IV.


 戦時中は不遇の時期を過ごし、第二次世界大戦開戦から1945年まではアメリカ軍に自由を奪われていました。1946年に解放されたものの、ドイツのいずれの教室においても彼に研究する場所はなく、教授職を失うこととなりました。

 1950年にようやくトルコのイスタンブール大学の組織学教授に就任することができました。その後、1961年までその地位につきました。1966年にミュンヘンで逝去しています。


<偉人たち>
Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
Clara細胞の発見者:Max Clara
サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram


<音楽と医学>
モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒
ブラームスは外科医ビルロートの親友だった



by otowelt | 2019-07-14 09:10 | コラム:医学と偉人

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