肺内のスリガラス影に対して局所切除をした後も、5年を越えて肺癌は断端再発しうる

肺内のスリガラス影に対して局所切除をした後も、5年を越えて肺癌は断端再発しうる_e0156318_21432285.jpg呼吸器内科医、呼吸器外科医にとって、「術後5年再発がなければ大丈夫」という一つの目安がある。しかし、まれに術後5年を越えて肺癌を発症することがある。再発であることもあれば、新規発症であることもある。JTOから、GGO切除後5年を越えて再発した症例の報告があった。

Nakao Masayuki, et al.
Long-Term Outcomes of 50 Cases of Limited-Resection Trial for Pulmonary Ground-Glass Opacity Nodules
Journal of Thoracic Oncology: Published Ahead-of-Print, 8 August 2012


背景:
 1998年から2002年までの間、肺内の2cm以下のスリガラス影において局所切除をおこなった症例をプロスペクティブに検討した。これは本試験の2回目の報告であり、長期アウトカムについての報告である。
Yoshida J, Nagai K, Yokose T, et al. Limited resection trial for pulmonary ground-glass opacity nodules: fifty-case experience. J Thorac Cardiovasc Surg 2005;129:991–996.

方法:
 試験の登録基準は以下の通りである:2cm以下の肺末梢結節影で、臨床的にT1N0M0の癌が疑われるスリガラス陰影で、胸膜陥入像や血管収束像がHRCTでみられないもの。
 局所切除検体は術中に凍結標本にして迅速診断された。結節影が野口分類タイプAあるいはB(腫瘍間質に活動性線維芽細胞増殖を伴わないもの)とわかった場合、切開部は縫合され患者はフォローアップされた。サーベイランス期間は中央値で10年であった。

結果:
 50人の患者が登録され、50ヶ月にわたってフォローアップが可能であったのは前回の試験で報告していた26人であった。50人のうち、40人が腺癌と診断され、2人が野口分類タイプAであり、23人がタイプB、14人がタイプCの腺癌であった(当初タイプCが14人いたが、10人が結局lobectomy+リンパ節郭清されている)。その他、5人がAAH、4人が線維性、1人が肉芽腫であった。初期の5年以内に再発した患者はいなかったものの、局所切除をおこなった4人は手術からさらに5年以上(計10年)の期間を経て断端再発(おそらく)がみられた。
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 再発した4人は、それぞれ5.5年、7.9年、8.0年、10.5年を経て再発した。タイプBが3人、タイプCが1人であった。
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結論:
 肺内のスリガラス影に対して26人の局所切除をおこなった腺癌(野口分類タイプA~C)患者のうち、術後5年をこえて発癌がみられた。それはおそらく断端再発であると考えられる。われわれは、5年のフォローアップというのは十分な観察期間ではなく、また局所切除はまだ試験的なこころみで行われるべきである、それは小さなスリガラス影においても同様である。
by otowelt | 2012-08-21 05:03 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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