抗癌剤による脱毛:医療用ウィッグ
2012年 08月 25日
●誰でも脱毛は恥ずかしい
抗癌剤によって起こる脱毛は、男女いずれにも起こりうるが、経験的には女性の方が精神的ダメージが大きい。というのも、高齢男性はさほど毛髪が少なくても違和感がないと思われるが、いかなる年齢層においても女性にとって脱毛というのは計り知れない羞恥心を惹起させてしまう。
医療従事者、特に抗癌剤治療をおこなっている医師はしばしば感覚が麻痺してしまうかもしれないが、”脱毛”という副作用はきわめてストレスが大きなものだということを認識しておかねばならない。医療用ウィッグについて情報が少ない医療従事者がかなり多いため、癌患者さんを診療している医療従事者はそういった情報にもアンテナを張っておく必要がある。
●医療用ウィッグ
医療用ウィッグが欧米では当たり前のように使用されているが、実は日本では大手メーカーが開発販売しているにも関わらず、普及率はそこまで高いものではない。この大きな原因の1つが医療従事者の知識・情報やカウンセリングなどの体制が不足していることが挙げられる。
Yeager CE, Olsen EA. Treatment of chemotherapy-induced alopecia. Dermatol Ther. 2011 Jul-Aug;24(4):432-42.
ウィッグが普及しにくいもう1つの理由として、その値段が挙げられる。医療用ウィッグの値段はピンキリであるが、オーダーメイドにすることで値段が高くなってしまう。毛色などの問題で、部分用医療用かつらだと地毛の色に合わせるために、ある程度オーダーメイドにしなければならなくなる。
上記の理由から、癌の病棟で脱毛を隠すためにバンダナを使用している女性はまだまだ多い。しかし、バンダナだと冠婚葬祭に出席なんて到底できないだろう。そのため、私たちは医療用ウィッグの情報を患者さんに提供して差し上げる必要があるが、医療従事者に医療用ウィッグの教育がなされることはないため、患者さんが自力で情報収集をしているのが現状である。
以下に定評のあるメーカーについて列挙してみたい。
・スヴェンソン(http://www.katsura-ladys.com/index.html)
20年以上の抗癌剤による脱毛のためのウィッグ開発を手がけており、ウィッグの品数はトップクラスだろうと思われる。通常にオーダーした場合、10万円を超えることは覚悟しておいた方がよいかもしれない。個室対応など精神的な配慮もしっかりしている。フルオーダーだとある程度高額になるため、既製品とフルオーダーの間のセミオーダー(カットしたり微調整を加える)が人気筋のようだ。医療従事者にとってスヴェンソンのよいところは、医療従事者向けに講義をおこなっているところである。脱毛のマニュアルも提供していただけるので、非常にありがたい。
・フォンテーヌ(http://www.fontaine.jp/rafra/)
人工毛でなければ、値段は10万円台は確実と思ったほうがよいが、フォンテーヌは品質だけでなくアクセスがよいという利点がある。百貨店や全国各地に拠点があるため、患者さんからもその点では安心できるという意見は多い。毛髪の生え際が自然に表現できるという点も評価は高い。
・ナチュラルスタイル(http://www.natural.ne.jp/medicalq_jyosei.html)
販売しているウィッグが同じ値段、というわかりやすい価格設定である。人毛である割には安いため人気のメーカーの1つである。中国産のウィッグだが、これは安価提供を実現するための戦略であるため、品質で困ることはない。既成のもので13万8000円、オーダーメイドで17万8000円である。
・キュアウィッグ(http://www.cure-wig.jp/)
基本的には既製品のみの販売となっている。ショートとミディアムの2種類のヘアから選択する。”3万円で買える医療用かつら”という宣伝に偽りはなく、価格が極めて安い(2万6000円)。当院でも人気のウィッグメーカーの1つである。
・an(アン)(http://www.beauty-an.jp/index.php)
サイズ調整がしやすい医療用ウィッグを販売している。大手メーカーの中では価格は低めで、人毛100%のウィッグであってもおおむね10万円以内で満足いくものを作成することが可能と評判である。
・フィットミー(http://www.fitme.jp/)
インナーキャップの上からウィッグをつけるタイプであるため、ウィッグがズレにくいという利点がある。そのためあまりズレを気にせずに生活することができる。また、肌にやさしいため、あまりチクチクしないというのも重要なポイント。価格帯は5万円を下回るものが多い割に、ヘアスタイルの選択肢が多いためか評判は良い。
・ライツフォル(http://www.katsuranorental.jp/)
特徴としては患者さんの予算別にグレードがわかれているところであろう。プラチナ、ゴールド、シルバーの3グレードがある。シルバーで低価格のものは3万円を下回る。また、珍しく月額制でレンタルが可能なメーカーでもある。宅配無料試着サービスをおこなっている点も、評価が高い。
地方のメーカーや、もう少し規模の小さなメーカーは他にもたくさんあると思うが、どのメーカーのどのウィッグにするかは、人それぞれである。予算と見た目、品質を天秤にかける必要もあるかもしれない。
抗癌剤治療中の女性にとって”医療用ウィッグは旅の友”という言葉が最近の論文にあった。
Zannini L, et al. 'My wig has been my journey's companion': perceived effects of an aesthetic care programme for Italian women suffering from chemotherapy-induced alopecia. Eur J Cancer Care (Engl). 2012 Sep;21(5):650-60
抗癌剤によって起こる脱毛は、男女いずれにも起こりうるが、経験的には女性の方が精神的ダメージが大きい。というのも、高齢男性はさほど毛髪が少なくても違和感がないと思われるが、いかなる年齢層においても女性にとって脱毛というのは計り知れない羞恥心を惹起させてしまう。
医療従事者、特に抗癌剤治療をおこなっている医師はしばしば感覚が麻痺してしまうかもしれないが、”脱毛”という副作用はきわめてストレスが大きなものだということを認識しておかねばならない。医療用ウィッグについて情報が少ない医療従事者がかなり多いため、癌患者さんを診療している医療従事者はそういった情報にもアンテナを張っておく必要がある。
●医療用ウィッグ
医療用ウィッグが欧米では当たり前のように使用されているが、実は日本では大手メーカーが開発販売しているにも関わらず、普及率はそこまで高いものではない。この大きな原因の1つが医療従事者の知識・情報やカウンセリングなどの体制が不足していることが挙げられる。
Yeager CE, Olsen EA. Treatment of chemotherapy-induced alopecia. Dermatol Ther. 2011 Jul-Aug;24(4):432-42.
ウィッグが普及しにくいもう1つの理由として、その値段が挙げられる。医療用ウィッグの値段はピンキリであるが、オーダーメイドにすることで値段が高くなってしまう。毛色などの問題で、部分用医療用かつらだと地毛の色に合わせるために、ある程度オーダーメイドにしなければならなくなる。
上記の理由から、癌の病棟で脱毛を隠すためにバンダナを使用している女性はまだまだ多い。しかし、バンダナだと冠婚葬祭に出席なんて到底できないだろう。そのため、私たちは医療用ウィッグの情報を患者さんに提供して差し上げる必要があるが、医療従事者に医療用ウィッグの教育がなされることはないため、患者さんが自力で情報収集をしているのが現状である。
以下に定評のあるメーカーについて列挙してみたい。
・スヴェンソン(http://www.katsura-ladys.com/index.html)
20年以上の抗癌剤による脱毛のためのウィッグ開発を手がけており、ウィッグの品数はトップクラスだろうと思われる。通常にオーダーした場合、10万円を超えることは覚悟しておいた方がよいかもしれない。個室対応など精神的な配慮もしっかりしている。フルオーダーだとある程度高額になるため、既製品とフルオーダーの間のセミオーダー(カットしたり微調整を加える)が人気筋のようだ。医療従事者にとってスヴェンソンのよいところは、医療従事者向けに講義をおこなっているところである。脱毛のマニュアルも提供していただけるので、非常にありがたい。
・フォンテーヌ(http://www.fontaine.jp/rafra/)
人工毛でなければ、値段は10万円台は確実と思ったほうがよいが、フォンテーヌは品質だけでなくアクセスがよいという利点がある。百貨店や全国各地に拠点があるため、患者さんからもその点では安心できるという意見は多い。毛髪の生え際が自然に表現できるという点も評価は高い。
・ナチュラルスタイル(http://www.natural.ne.jp/medicalq_jyosei.html)
販売しているウィッグが同じ値段、というわかりやすい価格設定である。人毛である割には安いため人気のメーカーの1つである。中国産のウィッグだが、これは安価提供を実現するための戦略であるため、品質で困ることはない。既成のもので13万8000円、オーダーメイドで17万8000円である。
・キュアウィッグ(http://www.cure-wig.jp/)
基本的には既製品のみの販売となっている。ショートとミディアムの2種類のヘアから選択する。”3万円で買える医療用かつら”という宣伝に偽りはなく、価格が極めて安い(2万6000円)。当院でも人気のウィッグメーカーの1つである。
・an(アン)(http://www.beauty-an.jp/index.php)
サイズ調整がしやすい医療用ウィッグを販売している。大手メーカーの中では価格は低めで、人毛100%のウィッグであってもおおむね10万円以内で満足いくものを作成することが可能と評判である。
・フィットミー(http://www.fitme.jp/)
インナーキャップの上からウィッグをつけるタイプであるため、ウィッグがズレにくいという利点がある。そのためあまりズレを気にせずに生活することができる。また、肌にやさしいため、あまりチクチクしないというのも重要なポイント。価格帯は5万円を下回るものが多い割に、ヘアスタイルの選択肢が多いためか評判は良い。
・ライツフォル(http://www.katsuranorental.jp/)
特徴としては患者さんの予算別にグレードがわかれているところであろう。プラチナ、ゴールド、シルバーの3グレードがある。シルバーで低価格のものは3万円を下回る。また、珍しく月額制でレンタルが可能なメーカーでもある。宅配無料試着サービスをおこなっている点も、評価が高い。
地方のメーカーや、もう少し規模の小さなメーカーは他にもたくさんあると思うが、どのメーカーのどのウィッグにするかは、人それぞれである。予算と見た目、品質を天秤にかける必要もあるかもしれない。
抗癌剤治療中の女性にとって”医療用ウィッグは旅の友”という言葉が最近の論文にあった。
Zannini L, et al. 'My wig has been my journey's companion': perceived effects of an aesthetic care programme for Italian women suffering from chemotherapy-induced alopecia. Eur J Cancer Care (Engl). 2012 Sep;21(5):650-60
by otowelt
| 2012-08-25 18:55
| 肺癌・その他腫瘍