メタアナリシス:スピリーバ・レスピマットは総死亡・心血管系死亡リスクを有意に上昇
2012年 10月 17日
呼吸器内科医なら誰でもショックを受けたであろう、スピリーバ・レスピマットの死亡率上昇の論文は記憶に新しいです。このBMJのスタディでは、プラセボと比較して総死亡(リスク比1.52;95% CI 1.06 to 2.16)、心血管系による死亡(リスク比 2.05;95% CI 1.06 to 3.99)のリスク上昇が確認されました。
Singh S, et al. Mortality associated with tiotropium mist inhaler
in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and
meta-analysis of randomized controlled trials. BMJ 2011;342:d3215.
予想はしていましたが、Thoraxからメタアナリシスが出てしまいました。COPDを診療されている呼吸器内科医は必読です。
Yaa-Hui Dong, et al.
Comparative safety of inhaled medications in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and mixed treatment comparison meta-analysis of randomised controlled trials
Thorax Online First, published on October 6, 2012 as 10.1136/thoraxjnl-2012-201926
背景:
COPD患者における吸入治療の比較安全性情報は限られてる。われわれは、総死亡および心血管系による死亡をCOPDに対する吸入治療を受けている患者で比較を行った。
方法:
システマティックデータベース検索(MEDLINE, CINAHL, Cochrane Library and ClinicalTrials.gov)により、チオトロピウムSoft Mist Inhaler(レスピマット製剤)(Boehringer Ingelheim,Ingelheim am Rhein, Germany)、チオトロピウムハンディヘラー、長時間作用型β2刺激薬(LABAs)、吸入ステロイド(ICS)、LABA-ICS合剤を少なくとも6ヶ月治療おこなったランダム化比較試験を登録した。全ての試験は、総死亡および心血管系死亡の情報を掲載しているものとした。非英語文献、喘息合併例、プロトコルのみongoingの試験は除外された。
プライマリアウトカムは総死亡、セカンダリアウトカムは心血管系による死亡とした。
2人の研究者(薬剤師1人、医師1人)によって上記手法によりランダム化比較試験を抽出。直接比較およびMTCによるメタアナリシスを施行した(STATA V.9.0 (StataCorp) 、WinBUGS V.1.4.3 (MRC Biostatistics Unit, Cambridge, UK))
結果:
42試験、52516人の患者が総死亡の情報を有し、31試験が心血管系による死亡の情報を有していた。24試験が適切な手法によるランダム化試験であると判定された。総死亡におけるチオトロピウム・ハンディヘラーとLABAの比較(I2=59.4%)を除いて、統計学的異質性は最小限であった。
固定効果モデルでのMTCメタアナリシスでチオトロピウムSoft Mist Inhaler(レスピマット製剤)はプラセボと比較して有意に総死亡と相関がみられた(OR 1.51; 95% CI 1.06 to 2.19)。また、ハンディヘラーとの比較(OR 1.65; 95% CI 1.13 to 2.43)、LABAとの比較(OR 1.63; 95% CI 1.10 to 2.44)、LABA-ICS合剤との比較(OR1.90; 95% CI 1.28 to 2.86)においても、レスピマット製剤の有意な死亡リスクが認められた。
このリスク上昇は心血管系死亡と強く相関しており、重症のCOPD患者やチオトロピウム使用量の多い患者によくみられた。probabilityはレスピマット製剤で総死亡8%、心血管系死亡3.5%。 LABA-ICS合剤は、全治療群の中で死亡リスクが最も低かった。超過リスクは、ハンディヘラーとLABAではみられなかった。この結果は、MTCおよび直接比較のメタアナリシス双方で同等であった。 ディスカッション:
レスピマット製剤の問題点は、その曝露濃度がハンディヘラ―に比べて高く、全身への影響が大きくなることではないかと思われる(Respir Med 2009;103:22-9.)。しかしながら、この全身的影響については日本の試験では認められなかった(Respir Med 2010;104:228-36.)。そのほかの可能性として、レスピマット製剤が不整脈を惹起あるいは悪化させる可能性が指摘されている。
結論:
このスタディによって、吸入治療の比較安全性スペクトラムを提示した。チオトロピウムSoft Mist Inhaler (レスピマット製剤)は、死亡率上昇に関連するため警告を発すべきである。
Singh S, et al. Mortality associated with tiotropium mist inhaler
in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and
meta-analysis of randomized controlled trials. BMJ 2011;342:d3215.
予想はしていましたが、Thoraxからメタアナリシスが出てしまいました。COPDを診療されている呼吸器内科医は必読です。
Yaa-Hui Dong, et al.
Comparative safety of inhaled medications in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and mixed treatment comparison meta-analysis of randomised controlled trials
Thorax Online First, published on October 6, 2012 as 10.1136/thoraxjnl-2012-201926
背景:
COPD患者における吸入治療の比較安全性情報は限られてる。われわれは、総死亡および心血管系による死亡をCOPDに対する吸入治療を受けている患者で比較を行った。
方法:
システマティックデータベース検索(MEDLINE, CINAHL, Cochrane Library and ClinicalTrials.gov)により、チオトロピウムSoft Mist Inhaler(レスピマット製剤)(Boehringer Ingelheim,Ingelheim am Rhein, Germany)、チオトロピウムハンディヘラー、長時間作用型β2刺激薬(LABAs)、吸入ステロイド(ICS)、LABA-ICS合剤を少なくとも6ヶ月治療おこなったランダム化比較試験を登録した。全ての試験は、総死亡および心血管系死亡の情報を掲載しているものとした。非英語文献、喘息合併例、プロトコルのみongoingの試験は除外された。
プライマリアウトカムは総死亡、セカンダリアウトカムは心血管系による死亡とした。
2人の研究者(薬剤師1人、医師1人)によって上記手法によりランダム化比較試験を抽出。直接比較およびMTCによるメタアナリシスを施行した(STATA V.9.0 (StataCorp) 、WinBUGS V.1.4.3 (MRC Biostatistics Unit, Cambridge, UK))
結果:
42試験、52516人の患者が総死亡の情報を有し、31試験が心血管系による死亡の情報を有していた。24試験が適切な手法によるランダム化試験であると判定された。総死亡におけるチオトロピウム・ハンディヘラーとLABAの比較(I2=59.4%)を除いて、統計学的異質性は最小限であった。
固定効果モデルでのMTCメタアナリシスでチオトロピウムSoft Mist Inhaler(レスピマット製剤)はプラセボと比較して有意に総死亡と相関がみられた(OR 1.51; 95% CI 1.06 to 2.19)。また、ハンディヘラーとの比較(OR 1.65; 95% CI 1.13 to 2.43)、LABAとの比較(OR 1.63; 95% CI 1.10 to 2.44)、LABA-ICS合剤との比較(OR1.90; 95% CI 1.28 to 2.86)においても、レスピマット製剤の有意な死亡リスクが認められた。
このリスク上昇は心血管系死亡と強く相関しており、重症のCOPD患者やチオトロピウム使用量の多い患者によくみられた。probabilityはレスピマット製剤で総死亡8%、心血管系死亡3.5%。
レスピマット製剤の問題点は、その曝露濃度がハンディヘラ―に比べて高く、全身への影響が大きくなることではないかと思われる(Respir Med 2009;103:22-9.)。しかしながら、この全身的影響については日本の試験では認められなかった(Respir Med 2010;104:228-36.)。そのほかの可能性として、レスピマット製剤が不整脈を惹起あるいは悪化させる可能性が指摘されている。
結論:
このスタディによって、吸入治療の比較安全性スペクトラムを提示した。チオトロピウムSoft Mist Inhaler (レスピマット製剤)は、死亡率上昇に関連するため警告を発すべきである。
by otowelt
| 2012-10-17 16:00
| 気管支喘息・COPD