胸腔ドレーン抜去は、深吸気時?あるいは深呼気時?
2012年 11月 08日
胸腔ドレーンを抜去するとき、呼吸器科医には大きく分けて2通りの方法があります。
1.深吸気時に抜去する
2.深呼気時に抜去する
少数例では、呼気途中であったり吸気途中であったりする医師にも出会ったことがあります。
私自身は、1.が当たり前だと思って研修を受けてきたのですが、実は施設によってこの意見は二分しているのが現状です。私が教えられたのは、吸気時が最も胸腔内圧が高いから、抜去中に息止めができなくなったとしても最大吸気位なら次に来るのは呼気相だから、という2つの理由からでした。いくつかの教科書ではValsalva 法(深吸気後に息を止める)を採用している方がやや多いように思います。
Rasidらの論文でも、文中に「Valsalva法によって呼吸を止めている最中に胸腔ドレーンを抜去し…」という記載がありますので、論文的には1.が主流であると推察されます。
Rashid MA, et al. A simple technique for anchoring chest tubes. Eur Respir J. 1998 Oct;12(4):958-9.
この疑問にヒントをくれる報告があります。9人の外傷患者に挿入されていた102の胸腔ドレーンを、深吸気時に抜去する群52チューブ、深呼気時に抜去る群50チューブにランダムに割り付けておこなった前向き試験です。この試験では、気胸の再発あるいは少量の気胸腔の増大(ただし安定しているもの)の頻度は、深吸気時に抜去した群で8%、呼気時に抜去した群で6%でした(p = 1.0)。前者の群で2人、後者の群で1人の再挿入が必要でした。患者背景によって、これらのアウトカムに差はみられませんでした。
Bell RL, et al. Chest tube removal: end-inspiration or end-expiration? J Trauma. 2001 Apr;50(4):674-7.
また、67の胸腔ドレーン抜去について解析した論文がありますが、この論文では29.9%に気胸再発(おそらく外気胸)がみられました。この論文は外傷患者で11人が亡くなっている重症例を集めたものですので、この再発率はそういったバイアスもかかっているものと思われます。この報告では、”胸壁の薄さ”が外気胸の独立危険因子と結論づけられています。
Anand RJ, et al. Thin chest wall is an independent risk factor for the development of pneumothorax after chest tube removal. Am Surg. 2012 Apr;78(4):478-80.
人工呼吸器を装着していると、どのタイミングで抜去すればよいのか迷いますが、12%に外気胸が起こりえるという報告がありますので、抜去後はできれば数時間以内に胸部レントゲンで気胸のチェックはしておきたいものです。
Pizano LR, et al. When should a chest radiograph be obtained after chest tube removal in mechanically ventilated patients? A prospective study. J Trauma. 2002 Dec;53(6):1073-7.
そのため、おそらく吸気時と呼気時のどちらのやり方でもさほど差はみられないと考えられます。10%近く起こりうるであろう外気胸の発症を考慮し、薄い胸壁の人にはより注意した方がよいだろうと思います。
1.深吸気時に抜去する
2.深呼気時に抜去する
少数例では、呼気途中であったり吸気途中であったりする医師にも出会ったことがあります。
私自身は、1.が当たり前だと思って研修を受けてきたのですが、実は施設によってこの意見は二分しているのが現状です。私が教えられたのは、吸気時が最も胸腔内圧が高いから、抜去中に息止めができなくなったとしても最大吸気位なら次に来るのは呼気相だから、という2つの理由からでした。いくつかの教科書ではValsalva 法(深吸気後に息を止める)を採用している方がやや多いように思います。
Rasidらの論文でも、文中に「Valsalva法によって呼吸を止めている最中に胸腔ドレーンを抜去し…」という記載がありますので、論文的には1.が主流であると推察されます。
Rashid MA, et al. A simple technique for anchoring chest tubes. Eur Respir J. 1998 Oct;12(4):958-9.
この疑問にヒントをくれる報告があります。9人の外傷患者に挿入されていた102の胸腔ドレーンを、深吸気時に抜去する群52チューブ、深呼気時に抜去る群50チューブにランダムに割り付けておこなった前向き試験です。この試験では、気胸の再発あるいは少量の気胸腔の増大(ただし安定しているもの)の頻度は、深吸気時に抜去した群で8%、呼気時に抜去した群で6%でした(p = 1.0)。前者の群で2人、後者の群で1人の再挿入が必要でした。患者背景によって、これらのアウトカムに差はみられませんでした。
また、67の胸腔ドレーン抜去について解析した論文がありますが、この論文では29.9%に気胸再発(おそらく外気胸)がみられました。この論文は外傷患者で11人が亡くなっている重症例を集めたものですので、この再発率はそういったバイアスもかかっているものと思われます。この報告では、”胸壁の薄さ”が外気胸の独立危険因子と結論づけられています。
Anand RJ, et al. Thin chest wall is an independent risk factor for the development of pneumothorax after chest tube removal. Am Surg. 2012 Apr;78(4):478-80.
人工呼吸器を装着していると、どのタイミングで抜去すればよいのか迷いますが、12%に外気胸が起こりえるという報告がありますので、抜去後はできれば数時間以内に胸部レントゲンで気胸のチェックはしておきたいものです。
Pizano LR, et al. When should a chest radiograph be obtained after chest tube removal in mechanically ventilated patients? A prospective study. J Trauma. 2002 Dec;53(6):1073-7.
そのため、おそらく吸気時と呼気時のどちらのやり方でもさほど差はみられないと考えられます。10%近く起こりうるであろう外気胸の発症を考慮し、薄い胸壁の人にはより注意した方がよいだろうと思います。
by otowelt
| 2012-11-08 12:34
| コントラバーシー