メタアナリシス:市中肺炎に対するステロイドの使用

市中肺炎に対するステロイド使用のメタアナリシスです。

Nie W, et al.
Corticosteroids in the treatment of community-acquired pneumonia in adults: a meta-analysis.
PLoS One. 2012;7(10):e47926. doi: 10.1371/journal.pone.0047926.


背景:
 市中肺炎に対するステロイドの使用はいまだに議論の余地がある。われわれは、補助的なステロイド使用をおこなった全てのランダム化比較試験を組み込み、成人の市中肺炎におけるステロイドの利益とリスクについて調査した。

方法:
 Pubmed, EMBASE, the Cochrane controlled trials register, Google Scholarによって信頼性のある試験を選択した。市中肺炎に対してステロイドを使用したランダム化比較試験、準ランダム化比較試験をメタアナリシスに組み込んだ。プライマリ効果アウトカムは死亡率、セカンダリ効果アウトカムは有害事象とした。

結果:
 9試験1001人の患者が登録された。ステロイドの使用は死亡率減少には寄与しなかった(Peto法のオッズ比0.62、95%信頼区間0.37-1.04、P = 0.07)。
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 重症度によるサブグループ解析では、重症市中肺炎では有意に死亡率減少がみられた(Peto法のオッズ比0.26、95%信頼区間0.11-0.64、P = 0.003)。
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 ステロイド治療期間によるサブグループ解析では、5日以上のステロイド使用は死亡率減少に寄与した(Peto法のオッズ比0.51、95%信頼区間、P = 0.04、I2 = 37%)。
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 ステロイドは高血糖を増加させたが(Peto法のオッズ比2.64、95%信頼区間1.68-4.15、P<0.0001)、消化管出血(Peto法のオッズ比1.67、95%信頼区間0.41-6.80、P = 0.47)や重複感染(Peto法のオッズ比1.36、95%信頼区間0.65-2.84、P = 0.41)のリスクは上昇させなかった。
 出版バイアスはfunnel plotではやや非対称であったが、Egger's testでは有意ではなかった(P=0.556)。
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結論:
 このメタアナリシスでは、市中肺炎に対するステロイドの使用は有意な利益をもたらさなかった。しかしながら、ステロイド使用は重症市中肺炎に対しては死亡率を改善させた。加えて、5日以上のステロイド使用は、死亡率減少に寄与した。さらなる適切なランダム化比較試験が望まれる。
by otowelt | 2012-12-13 00:59 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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