慢性咳嗽の4大原因は、咳喘息、上気道咳嗽症候群、好酸球性気管支炎、アトピー咳嗽

慢性咳嗽の4大原因は、咳喘息、上気道咳嗽症候群、好酸球性気管支炎、アトピー咳嗽_e0156318_224778.jpg 胃食道逆流症は慢性咳嗽の原因として教科書に記載されていますが、呼吸器臨床をしていてそれほど多くないことは多くの呼吸器科医が実感していることと思います。
 呼吸器科医にとって咳喘息とアトピー咳嗽の定義は言わずもがなですが、上気道咳嗽症候群と好酸球性気管支炎はちょっととっつきにくいというか、あまり臨床で重要視する場面は多くないと思います。
 最近は後鼻漏とは呼ばず上気道咳嗽症候群と呼びますが、これは後鼻漏を含め上気道の咳受容体への刺激が原因で咳が続くもの全体を指します。好酸球性気管支炎は、病理学的には気管支喘息と同様に喀痰中好酸球増加が観察されるにもかかわらず、気管支喘息とは異なり気道過敏性が亢進していない病態のことを指します。

Kefang Lai, et al.
A Prospective, Multicenter Survey on Causes of Chronic Cough in China
CHEST. 2012doi:10.1378/chest.12-0441


背景:
 中国における慢性咳嗽の原因および地理的因子、季節性、年齢、性差についてはほとんどわかっていない。

方法:
 中国の5地域において慢性咳嗽の原因を調査するプロスペクティブ多施設共同サーベイがおこなわれた。慢性咳嗽のスペクトラムにおける地理的因子、季節性、年齢、性差についても調査された。

結果:
 このスタディでは704人の成人患者が登録され、315人(44.7%)が男性で389人(55.3%)が女性であった。慢性咳嗽の原因は640人(90.9%)で同定された。その原因としては、咳喘息32.6%、上気道咳嗽症候群18.6%、好酸球性気管支炎17.2%、アトピー咳嗽13.2%であった。
 集積すると、これら4原因は5地域で75.2%から87.6%にのぼったが、地域差はみられなかった(P>0.05)。胃食道逆流性咳嗽は症例の4.6%であった。
 季節性、性差、年齢は特に慢性咳嗽スペクトラムに寄与するものではなかった(all P>0.05)。

結論:
 咳喘息、上気道咳嗽症候群、好酸球性気管支炎、アトピー咳嗽は中国における慢性咳嗽の4大原因であった。慢性咳嗽のスペクトラムに、地理的因子、季節性、年齢、性差は寄与しなかった。
by otowelt | 2012-12-19 00:44 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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