EGFR遺伝子変異陽性の肺扁平上皮癌に対するEGFR-TKIの奏効率は25%
2013年 01月 12日
EGFR遺伝子変異陽性の扁平上皮癌については、過去にInternal Medicineの論文を紹介したことがあります。
・EGFR遺伝子変異陽性の肺扁平上皮癌におけるゲフィチニブ
今月のJTOに、EGFR遺伝子変異陽性の肺扁平上皮癌のEGFR-TKIの日本の臨床試験が掲載されています。巻末にEGFR遺伝子変異陽性の肺扁平上皮癌の53歳女性の症例報告も掲載されていました。
Baik CS, et al. EGFR Mutations in Squamous Cell Lung Cancer in Never-Smokers. J Thorac Oncol. 2013 Jan;8(1):e6-7.
以下、今回の論文です。
Hata Akito, et al.
How Sensitive Are Epidermal Growth Factor Receptor–Tyrosine Kinase Inhibitors for Squamous Cell Carcinoma of the Lung Harboring EGFR Gene–Sensitive Mutations?
Journal of Thoracic Oncology: January 2013 - Volume 8 - Issue 1 - p 89–95
背景:
EGFR遺伝子変異はほとんどが腺癌でみられるが、まれに扁平上皮癌でみられることがある。EGFR遺伝子変異陽性の扁平上皮癌についてはよくわかっていない。
方法:
2006年4月から2010年10月までの間、EGFR遺伝子変異をpeptide nucleic acid (PNA)・ locked nucleic acid(LNA)を使用したPCR clamp法で同定した。
EGFR陽性扁平上皮癌に対するEGFR-TKIの効果をレトロスペクティブに評価した。免疫組織化学染色によって追加病理解析をおこなっている。
EGFR-TKIの用量は、ゲフィチニブ250 mg/day、エルロチニブ150 mg/dayとした。胸部レントゲンは1~4週間ごとに、胸部CTは1~3ヶ月ごとに撮影した。
結果:
249人の扁平上皮癌のうち、33人がEGFR遺伝子陽性であった。内訳は、exon 19 deletion (33人中19人, 58%)、L858R point mutation in exon 21 (33人中12人, 36%), and G719S point mutation in exon 18 (33人中2人, 6%)であった。
33人のうち20人がEGFR-TKIで治療を受け、20人のうち5人がEGFR-TKIに奏効した。奏効率は25.0% (95%信頼区間, 8.7%–49.1%)だった。患者の無増悪生存期間および全生存期間の中央値はそれぞれ1.4ヶ月(95%信頼区間, 0.7–5.8ヶ月)、14.6ヶ月(95%信頼区間, 2.9ヶ月–上限同定不可)だった。
EGFR遺伝子変異のある扁平上皮癌のおよそ3分の1が6ヶ月を上回る無増悪生存期間であった。これらの患者の幾分かはCEAレベルが高かったり非喫煙者であったりTTF-1が陽性であったりした。
結論:
EGFR-TKIは、EGFR遺伝子変異のある腺癌と比べると同変異のある扁平上皮癌には効果が乏しいと考えられるが、幾分かの患者はその臨床的恩恵を受けることができた。これらの患者群をより同定するため、EGFR遺伝子変異ステータスだけでなく、臨床的・病理学的所見を考慮に入れる必要がある。
・EGFR遺伝子変異陽性の肺扁平上皮癌におけるゲフィチニブ
今月のJTOに、EGFR遺伝子変異陽性の肺扁平上皮癌のEGFR-TKIの日本の臨床試験が掲載されています。巻末にEGFR遺伝子変異陽性の肺扁平上皮癌の53歳女性の症例報告も掲載されていました。
Baik CS, et al. EGFR Mutations in Squamous Cell Lung Cancer in Never-Smokers. J Thorac Oncol. 2013 Jan;8(1):e6-7.
以下、今回の論文です。
Hata Akito, et al.
How Sensitive Are Epidermal Growth Factor Receptor–Tyrosine Kinase Inhibitors for Squamous Cell Carcinoma of the Lung Harboring EGFR Gene–Sensitive Mutations?
Journal of Thoracic Oncology: January 2013 - Volume 8 - Issue 1 - p 89–95
背景:
EGFR遺伝子変異はほとんどが腺癌でみられるが、まれに扁平上皮癌でみられることがある。EGFR遺伝子変異陽性の扁平上皮癌についてはよくわかっていない。
方法:
2006年4月から2010年10月までの間、EGFR遺伝子変異をpeptide nucleic acid (PNA)・ locked nucleic acid(LNA)を使用したPCR clamp法で同定した。
EGFR陽性扁平上皮癌に対するEGFR-TKIの効果をレトロスペクティブに評価した。免疫組織化学染色によって追加病理解析をおこなっている。
EGFR-TKIの用量は、ゲフィチニブ250 mg/day、エルロチニブ150 mg/dayとした。胸部レントゲンは1~4週間ごとに、胸部CTは1~3ヶ月ごとに撮影した。
結果:
249人の扁平上皮癌のうち、33人がEGFR遺伝子陽性であった。内訳は、exon 19 deletion (33人中19人, 58%)、L858R point mutation in exon 21 (33人中12人, 36%), and G719S point mutation in exon 18 (33人中2人, 6%)であった。
33人のうち20人がEGFR-TKIで治療を受け、20人のうち5人がEGFR-TKIに奏効した。奏効率は25.0% (95%信頼区間, 8.7%–49.1%)だった。患者の無増悪生存期間および全生存期間の中央値はそれぞれ1.4ヶ月(95%信頼区間, 0.7–5.8ヶ月)、14.6ヶ月(95%信頼区間, 2.9ヶ月–上限同定不可)だった。
EGFR遺伝子変異のある扁平上皮癌のおよそ3分の1が6ヶ月を上回る無増悪生存期間であった。これらの患者の幾分かはCEAレベルが高かったり非喫煙者であったりTTF-1が陽性であったりした。
結論:
EGFR-TKIは、EGFR遺伝子変異のある腺癌と比べると同変異のある扁平上皮癌には効果が乏しいと考えられるが、幾分かの患者はその臨床的恩恵を受けることができた。これらの患者群をより同定するため、EGFR遺伝子変異ステータスだけでなく、臨床的・病理学的所見を考慮に入れる必要がある。
by otowelt
| 2013-01-12 00:53
| 肺癌・その他腫瘍