エルロチニブに別の標的治療を組み合わせることで生存期間が延長するかもしれない

エルロチニブに別の標的治療を組み合わせることで生存期間が延長するかもしれない_e0156318_14124865.jpg 複数の分子標的薬を併用した臨床試験のメタアナリシスです。

Qi WX, et al.
Overall survival benefits for combining targeted therapy as second-line treatment for advanced non-small-cell-lung cancer: a meta-analysis of published data.
PLoS One. 2013;8(2):e55637.


背景:
 既治療の進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対してエルロチニブに別の標的治療を組み合わせることは広く研究されてきたが、標準的なエルロチニブの単剤治療に比べて利益があるかどうかは不明である。そのため、我々は標準治療に標的治療を組み合わせる場合とエルロチニブ単独を比較したランダム化比較試験を抽出した。
 標的治療の対象となったのは、ボルテゾミブ、ベバシズマブ、エベロリムス、ティバンチニブ、ソラフェニブ、R1507(IGF-1R)、スニチニブなど。
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方法:
 NSCLCのセカンドラインにおいてエルロチニブとそのほかの分子標的薬を併用した臨床試験を、Pubmed, Embase, Cochraneデータベースにおいて論文を検索した。エンドポイントは全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)、grade3ないし4の有害事象とした。

結果:
 8試験が登録され2417人の患者データが解析対象となった。ITT解析では、エルロチニブと別の標的治療の組み合わせは有意にOS(HR 0.90, 95%CI: 0.82-0.99, p = 0.024), PFS (HR 0.83, 95%CI: 0.72-0.97, p = 0.018), ORR (OR 1.35, 95%CI 1.01-1.80, P = 0.04)を改善した。
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▲OS
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▲PFS
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▲ORR

 サブグループ解析では、EGFR野生型とKRAS遺伝子変異はPFSを改善する結果が得られた。OSはこれらのステータスによる統計学的有意差はみられなかった。
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 有害事象は、grade3ないし4の皮疹、疲労感、高血圧は有意に併用群で多くみられた。
 出版バイアスはOSやPFSにはみられなかった(p= 0.162 for OS、p =0.171 for PFS)が、ORRでは確認された(p= 0.015)。

結論:
 現在有用なエビデンスでは、NSCLCのセカンドラインの標準的なエルロチニブ治療に別の標的治療を組み合わせることは、エルロチニブ単剤に比べて生存的利益があると考えられる。対象となる患者を限定するため、さらなる研究が望まれる。


by otowelt | 2013-02-22 00:02 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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