
・PM2.5の問題は本当に緊急事態なのか?
結核病棟で診療している方はご存知と思いますが、N95のNは、非耐油性であることを表します(Not resistant to oil)。医療現場で使用するマスクに耐油性や防油性のマスクは不要です。また、95は空力学的質量径で0.3μm以上の試験粒子を95%以上捕捉できる規格をクリアしていることを意味します。
なお、N95マスクは顎のサイズや顔の形によってうまくフィットしないこともあるため(Am J Infect Control. 2008 May;36(4):298-300)、一施設に3種類のN95マスクを常備しておく方がよいとされています。
C. Raina MacIntyre, et al.
A randomised clinical trial of three options for N95 respirators and medical masks in health workers
Am. J. Respir. Crit. Care Med. February 14, 2013, Published ahead of print
背景:
われわれは、医療用マスクとN95マスク(N95 filtering face-piece respirator)を医療従事者に用いることで3つのマスク予防策オプションを比較した。
デザイン:
中国北京にある1669人の医療従事者が勤務する19病院68病棟でのランダム化臨床試験を2009年および2010年冬に施行した。18歳以上の看護師および医師が登録された。
方法:
参加者は以下の3オプションにランダム化された。すなわち、医療用マスクを使用、N95マスクを使用、状況に応じて適宜N95マスクを使用する方法である。アウトカムとして臨床的呼吸器系疾患:clinical respiratory illness (CRI)、インフルエンザ様症状、アデノウイルスなどの上気道に親和性のあるウイルスの検出、検査室でのインフルエンザウイルスの同定、症状のある医療従事者における検査室で確定された呼吸器系病原菌の検出が含まれた。
N95マスクの使用にあたり、3M™ FT-30 Bitrex Fit Test Kitを用いてフィットがうまくできているかどかチェックされた。
結果:
CRIの頻度は医療用マスク群で最も高かった(98/572, 17%)。続いて、状況に応じたN95マスクの使用(61/516, 11.8%), N95マスク群(42/581, 7.2%)であった(P < 0.05)。CRIのある医療従事者で呼吸器系の細菌コロナイゼーションは医療用マスク群が最も頻度が高かった(14.7%, 84/572)。続いて、状況に応じたN95マスクの使用(10.1%, 52/516)、N95マスク群(6.2%, 36/581)であった(P = 0·02)。
交絡因子による補正をおこなうと、持続的にN95マスクを使用することで有意にCRIおよび細菌コロナイゼーションが抑制できることがわかった。状況に応じたN95マスクの使用は、医療用マスクに対する優越性が証明されなかった。

結論:
医療従事者に対して医療用マスクを通常単独で用い、状況に応じてN95マスクを使用する予防策が一般的とされている。しかし持続的にN95マスクを使用することは、間欠的にN95マスクを使用することや医療用マスクと比べてCRIの発症に対してより効果的に働くことがわかった。
また、医療用従事者がN95マスクを継続使用することで気道コロナイゼーションも減少する。医療従事者に対する標準予防策の職業的理念に新たな情報をもたらす結果となった。