Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
2013年 03月 03日

嘔吐に起因する食道破裂をBoerhaave症候群と呼びます。日本語の読み方は、江戸時代から「ブールハーフェ」と発音していますが、欧米では英語で「ベアーハーヴ」と発音します。
日本の教科書では、Boerhaave症候群は食道壁全層を障害することによる縦隔気腫が起こるとされており、一方Mallory‐Weiss症候群は粘膜下層のみの障害という概念がよく知られています。オランダ人にとっては誰もが知っている有名な偉人ですが、日本人にとってはBoerhaave症候群くらいでしか彼の名前を耳にすることはないでしょう。日本では、国家試験勉強中の医学生や消化器科医・呼吸器科医・救急医くらいにしか馴染みのない名前かもしれませんね。
彼が報告したBoerhaave症候群は、Baron Jan Gerrit van Wassenaer Heer van Rosenbergという名前のオランダ人提督に起こりました。彼は暴飲暴食のあとに嘔吐し、食道破裂を起こしました。Boerhaaveはこれを最初の例として報告しています。そのため、Boerhaave-van Wassenaer症候群と呼ばれることもあります。
Boerhaave H. Atrocis, nec descripti prius, morbii historia: secundum medicae artis leges conscripta. Leiden, the Netherlands: Lugduni Batavorum Boutesteniana, 1724
Herman Boerhaaveは17-18世紀に活躍したオランダの内科医であり、オランダの医学教育や教育病院のいしずえとなった偉人として扱われています。そのため、オランダでは1970年まで20ギルダー紙幣に彼の顔が使われていました。Boerhaaveは1668年にオランダのフォールハウトで牧師の息子として誕生しました。大学では哲学と神学を専攻したものの、医学だけでなく植物学、物理学にも精通していたといいます。

晩年まで医学教育に尽力し、61歳に故郷ライデンで逝去しました。現在、オランダのライデンにはBoerhaave museumという彼の名を冠した医学博物館があります。
<偉人たち>
・Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
・Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
・Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
・Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
・Clara細胞の発見者:Max Clara
・サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
・Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
・Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
・Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram
・Biot呼吸の提唱者:Camille Biot
<音楽と医学>
・プロコフィエフの死因は脳出血
・ガーシュウィンは多形膠芽腫だった?
・バッハの失明の原因は医療ミス?
・チャイコフスキーの死因はコレラか自殺か?
・モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
・ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
・ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
・ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒
by otowelt
| 2013-03-03 00:01
| コラム:医学と偉人