
自然気胸に対するドレナージ治療にミノサイクリンによる胸膜癒着術を加えることで気胸再発率が減少したというLancetからの報告です。ただし、コントロール群の1年再発率が49.1%というのは多すぎる気がします。実臨床ではそこまで多いとは感じません。
Jin-Shing Chen, et al.
Simple aspiration and drainage and intrapleural minocycline pleurodesis versus simple aspiration and drainage for the initial treatment of primary spontaneous pneumothorax: an open-label, parallel-group, prospective, randomised, controlled trial.
The Lancet, Early Online Publication, 18 February 2013, doi:10.1016/S0140-6736(12)62170-9
背景:
単純吸引とドレナージは原発性自然気胸の標準的治療であるが、気胸の再発率がそれなりの頻度でみられる。われわれは、単純吸引とドレナージの後にミノサイクリンによる胸膜癒着術を併用することで、気胸再発を減らすことができるかどうかを調べた。
方法:
台湾におけるプロスペクティブ非盲検ランダム化対照比較試験により、原発性自然気胸に対する標準的な初回治療である単純吸引+ドレナージ施行後に、ミノサイクリンによる胸膜癒着術を併用し、再発抑制効果を評価した。15~40歳の原発性自然気胸の初期徴候である胸部レントゲン上2cm以上の虚脱みられ、ドレナージ施行後はエアリークを伴わない肺の全拡張が得られ、血液検査正常な症例を組み込んだ。
登録された患者が、単純吸引+ドレナージ施行後に、ミノサイクリンによる胸膜癒着術を併用する群あるいは併用しない群(コントロール群)にランダムに割り付けられた。プライマリアウトカムは1年後の気胸再発率とした。
結果:
2006年12月31日~2012年6月30日までに台湾2施設から自然気胸患者214人が登録され、ミノサイクリン群に106人、コントロール群に108人が割り付けられた。
ミノサイクリン群の患者特性は、平均年齢21.7歳、男性87.7%、平均身長1.72m、平均体重57.4kg、平均BMI 19.2kg/m2、コントロール群は平均年齢22.0歳、男性88.9%、平均身長1.73m、平均体重58.6kg、BMI19.4kg/m2であった。
ランダム化7日以内の治療失敗は、ミノサイクリン群14人、コントロール群20人であった。1年後の気胸再発率は、ミノサイクリン群が29.2%(106人中31人)と、コントロール群が49.1%(108人中53人)であった(p=0.003)。
気胸の疼痛抑制のための鎮痛薬を必要とした患者はミノサイクリン群で多かった(67.9% vs 19.4%、p<0.0001)。
また、合計入院期間(5.0日 vs 5.2日、p=0.45)は両群で同等であった。
結論:
原発性自然気胸に対する単純吸引およびドレナージ後のミノサイクリンによる胸膜癒着術は、癒着術を行わない治療法よりも安全で効果的であった。ミノサイクリンによる胸膜癒着術は原発性自然気胸に対する標準治療として位置づけられるべきものである。