気道ステント挿入は下気道感染のリスクを上昇させる
2013年 03月 18日
癌による気道狭窄をきたした患者さんに気道ステントを挿入することがあります。
・癌患者さんの気道狭窄に気管ステントはいつ入れるべきか
CHESTから、気道ステントと下気道感染に関するスタディです。下気道感染の診断が曖昧な気がしますが、抗癌剤や放射線治療が明らかに効果があると予測されるケースでは待機的に行うべきだろうという筆者の意見には賛同します。
Horiana B. Grosu, et al.
Stents Are Associated with Increased Risk of Respiratory Infections in Patients Undergoing Airway Interventions for Malignant Airway Disease
CHEST. 2013doi:10.1378/chest.12-1721
背景:
治療的気管支鏡の長期的合併症として感染症および腫瘍による気道再狭窄がある。気道ステントを挿入された患者と挿入されていない患者の間の、ステントの感染率を比較した報告はない。ステントを挿入することで、挿入されていない患者よりも高い頻度で下気道感染を起こすのではないかと仮説を立てた。
方法:
2009年9月から2011年8月までの間、悪性腫瘍による気道狭窄のため治療的気管支鏡を受けた患者に対するレトロスペクティブコホート試験をテキサス大学MDアンダーソンがんセンターで実施した。アウトカムは下気道感染および腫瘍による気道再狭窄とした。
ステントは以下のような症例に挿入される方針とした。すなわち、a)内因性の圧迫による50%超の気道閉塞、あるいはb) 50%超の気道開通があってもアブレーションを受けられそうにない症例、あるいはc) アブレーション後にステントを留置しないと高率に気道狭窄をきたしそうな症例、とした。
下気道感染症は、臨床的に発熱、膿性痰、咳嗽の悪化があるものとし胸部レントゲン異常は必須としなかった。気管支鏡検体における病原菌証明は必須としなかった。
結果:
72人の患者が悪性気道疾患に対して治療的気管支鏡を受けた。これらのうち24人に1つ以上の気道狭窄部位があった。24人のステント挿入患者のうち17人(71%)がアブレーションを受けた。
72人のうち23人(32%)に下気道感染がみられた。感染までの中央期間は64日(7-632日)だった。13人(56%)が入院を余儀なくされ、6人(26%)が感染から14日以内に死亡した。
多変量解析において、気道ステントは有意に下気道感染リスクを上昇させた(ハザード比3.76; 95%信頼区間1.57-8.99; P=.003)。また女性は有意に男性よりも非感染死亡リスクが高かった(男性ハザード比(vs女性)0.40;95%信頼区間0.17-0.94; P =.035)。
下気道感染の感染率はステントを挿入された患者で0.0057/人年、ステントを挿入されていない患者で0.0011/人年であった。発症率差は0.0046/人年と有意であった(95%信頼区間 0.0012-0.0081; P=.0002)。
腫瘍の成長による再狭窄は、ベースライン時の狭窄率が重度である場合に有意に多くみられた(ベースラインで50%超閉塞 vs <50%狭窄; ハザード比13.71; 95%信頼区間1.75-107.55; P=.013)。 結論:
治療的気管支鏡として気道ステントを挿入した場合、ステントを挿入しない場合と比較して下気道感染のリスクは高い。アブレーション技術で気道を再開通させることができ、化学療法や放射線治療に反応性があるような場合、初期のステント挿入を見送る戦略も考慮すべきだろう。
・癌患者さんの気道狭窄に気管ステントはいつ入れるべきか
CHESTから、気道ステントと下気道感染に関するスタディです。下気道感染の診断が曖昧な気がしますが、抗癌剤や放射線治療が明らかに効果があると予測されるケースでは待機的に行うべきだろうという筆者の意見には賛同します。
Horiana B. Grosu, et al.
Stents Are Associated with Increased Risk of Respiratory Infections in Patients Undergoing Airway Interventions for Malignant Airway Disease
CHEST. 2013doi:10.1378/chest.12-1721
背景:
治療的気管支鏡の長期的合併症として感染症および腫瘍による気道再狭窄がある。気道ステントを挿入された患者と挿入されていない患者の間の、ステントの感染率を比較した報告はない。ステントを挿入することで、挿入されていない患者よりも高い頻度で下気道感染を起こすのではないかと仮説を立てた。
方法:
2009年9月から2011年8月までの間、悪性腫瘍による気道狭窄のため治療的気管支鏡を受けた患者に対するレトロスペクティブコホート試験をテキサス大学MDアンダーソンがんセンターで実施した。アウトカムは下気道感染および腫瘍による気道再狭窄とした。
ステントは以下のような症例に挿入される方針とした。すなわち、a)内因性の圧迫による50%超の気道閉塞、あるいはb) 50%超の気道開通があってもアブレーションを受けられそうにない症例、あるいはc) アブレーション後にステントを留置しないと高率に気道狭窄をきたしそうな症例、とした。
下気道感染症は、臨床的に発熱、膿性痰、咳嗽の悪化があるものとし胸部レントゲン異常は必須としなかった。気管支鏡検体における病原菌証明は必須としなかった。
結果:
72人の患者が悪性気道疾患に対して治療的気管支鏡を受けた。これらのうち24人に1つ以上の気道狭窄部位があった。24人のステント挿入患者のうち17人(71%)がアブレーションを受けた。
72人のうち23人(32%)に下気道感染がみられた。感染までの中央期間は64日(7-632日)だった。13人(56%)が入院を余儀なくされ、6人(26%)が感染から14日以内に死亡した。
多変量解析において、気道ステントは有意に下気道感染リスクを上昇させた(ハザード比3.76; 95%信頼区間1.57-8.99; P=.003)。また女性は有意に男性よりも非感染死亡リスクが高かった(男性ハザード比(vs女性)0.40;95%信頼区間0.17-0.94; P =.035)。
下気道感染の感染率はステントを挿入された患者で0.0057/人年、ステントを挿入されていない患者で0.0011/人年であった。発症率差は0.0046/人年と有意であった(95%信頼区間 0.0012-0.0081; P=.0002)。
腫瘍の成長による再狭窄は、ベースライン時の狭窄率が重度である場合に有意に多くみられた(ベースラインで50%超閉塞 vs <50%狭窄; ハザード比13.71; 95%信頼区間1.75-107.55; P=.013)。
治療的気管支鏡として気道ステントを挿入した場合、ステントを挿入しない場合と比較して下気道感染のリスクは高い。アブレーション技術で気道を再開通させることができ、化学療法や放射線治療に反応性があるような場合、初期のステント挿入を見送る戦略も考慮すべきだろう。
by otowelt
| 2013-03-18 00:10
| 気管支鏡