排便喘息
2013年 03月 19日
呼吸器科医にとって、とても興味深い症例報告なので紹介させていただきます。過去の報告(J Emerg Med 18:195-197, 2000.)では、抗コリン薬による予防が可能と結論づけられていますが、今回の報告では排便をスムーズにすることが効果的であったという結論でした。
こういう喘息もあるんだなぁ、と非常に勉強になりました。
Ano H, et al.
Defecation-related Asthma
Intern Med 52: 685-687, 2013
症例:
39歳男性の排便捉迫感による腹部痙攣に誘発された再発性喘息発作の症例を報告する。患者は、5年前から始まったこれらの消化器症状によって致死的喘息発作の既往があった。彼は日常的に気管支喘息のコントロールは良好であったものの、強い排便捉迫感によってその発作に苦しんだ。
吸入ステロイド、吸入コリン薬などさまざまな薬剤を投与されたが救急外来受診回数は減らず、排便捉迫感を軽減するためにマグネシウム製剤で緩下治療をおこなったところ、排便がすみやかにおこなえるようになり、気管支喘息発作の頻度が減少した。 ディスカッション:
消化管蠕動運動や呼吸はいずれも自律神経系によって支配されている。そのため、自律神経の異常が便秘や下痢、気管支喘息に関与することが知られている。
排便時の気管支喘息発作について報告している英語文献は1例のみある(J Emerg Med 18:195-197, 2000.)。
過敏性腸症候群は気道過敏性を増加させ喘息の高い頻度に関連していると、過去に報告されている(Gastroenterology 100: 68-74, 1991., Am J Gastroenterol 96: 1511-1516, 2001.)。この症例では、Valsalva手技に関連した腸蠕動運動時の副交感神経の活性化がアセチルコリンの分泌を誘発し、これが気管支攣縮を起こしたのかもしれない。また、排便時のValsalva手技は胃食道逆流も惹起するため、これによって気管支喘息発作をきたしたという機序も考えられる。
こういう喘息もあるんだなぁ、と非常に勉強になりました。
Ano H, et al.
Defecation-related Asthma
Intern Med 52: 685-687, 2013
症例:
39歳男性の排便捉迫感による腹部痙攣に誘発された再発性喘息発作の症例を報告する。患者は、5年前から始まったこれらの消化器症状によって致死的喘息発作の既往があった。彼は日常的に気管支喘息のコントロールは良好であったものの、強い排便捉迫感によってその発作に苦しんだ。
吸入ステロイド、吸入コリン薬などさまざまな薬剤を投与されたが救急外来受診回数は減らず、排便捉迫感を軽減するためにマグネシウム製剤で緩下治療をおこなったところ、排便がすみやかにおこなえるようになり、気管支喘息発作の頻度が減少した。
消化管蠕動運動や呼吸はいずれも自律神経系によって支配されている。そのため、自律神経の異常が便秘や下痢、気管支喘息に関与することが知られている。
排便時の気管支喘息発作について報告している英語文献は1例のみある(J Emerg Med 18:195-197, 2000.)。
過敏性腸症候群は気道過敏性を増加させ喘息の高い頻度に関連していると、過去に報告されている(Gastroenterology 100: 68-74, 1991., Am J Gastroenterol 96: 1511-1516, 2001.)。この症例では、Valsalva手技に関連した腸蠕動運動時の副交感神経の活性化がアセチルコリンの分泌を誘発し、これが気管支攣縮を起こしたのかもしれない。また、排便時のValsalva手技は胃食道逆流も惹起するため、これによって気管支喘息発作をきたしたという機序も考えられる。
by otowelt
| 2013-03-19 00:03
| 気管支喘息・COPD