吸入アドヒアランス不良の患者における吸入回数の自己申告は信頼性に乏しい

吸入アドヒアランス不良の患者における吸入回数の自己申告は信頼性に乏しい_e0156318_12522180.jpg すいません、Bland-Altmanプロットやスプライン平滑化については詳しく知りません。コントロールが不良な場合は、こういった点も考慮する必要があるのだと身につまされます。

MITESH PATEL, et al.
Accuracy of patient self-report as a measure of inhaled asthma medication use
Respirology (2013) 18, 546–552


背景および目的:
 吸入気管支喘息治療のアドヒアランスを調べることは気管支喘息ケアにおいて優先される。このスタディの目的は、吸入ステロイド薬(ICS)単独および長時間作用型β刺激薬(LABA)単独、またはそれらの併用(ICS/LABA)に対して電子モニタリングを用いた自己申告での使用および実際の使用とを比較することである。

方法:
 すでに試験が完遂しているICS・LABAの単独吸入およびICS/LABA併用の24週ランダム化比較試験(J. Allergy Clin. Immunol. 2010; 126: 505–10.)におけるレトロスペクティブ解析である。参加者は24週間の間5回来院している。ランダム化の時点でvisit 1とカウントし、それ以降6週ごとにvisit 2-6があった。吸入薬を使用するとそのデータが蓄積され、クリニックではデータがダウンロードできる仕組みになっている。なお、この吸入回数をモニタリングしていることは被験者に知らされていない。試験のための来院の前の週における自己申告の吸入薬使用と電子モニタリングを比較した。
 111人の患者が125mgのプロピオン酸フルチカゾンと25mgのサルメテロールを1日2回吸入し、54人がこれら薬剤を同時に使用せずに単独で吸入、57人が両薬を併せて(ICS/LABA)使用した。
 自己申告と電子モニタリングのためにペア化されたデータが解析された。一致の判定のためにBland–Altman様プロットが用いられた(縦軸に差、横軸に平均をとって作った散布図)。

結果:
 単独吸入およびICS/LABA併用に対して、自己申告は電子モニタリングで計測された実際の吸入よりも、一週間あたり2.2–8.4吸入と過剰に見積もられていることがわかった(誤差の許容範囲limits of agreement:±15.8 -25.6吸入)。
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 実際の吸入が規定より少ない参加者は過多申告する傾向にあり、実際の吸入が多い患者は過少申告する傾向にあった。使用量が少なければ少ないほど、過多申告はその度合いを増していった。同様に、使用量が多ければ多いほど、過小申告はその度合いを増した。

結論:
 気管支喘息における吸入薬治療を過多使用あるいは過少使用している患者における、吸入薬使用回数の自己申告は実際の使用と解離しており不精確である。


by otowelt | 2013-04-11 00:18 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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