
この試験は肝障害の定義を厳しく設定した割に、実臨床に非常にマッチした内容だと思いました(意外にこういった試験は組まれていませんね)。
Shu CC, et al.
Hepatotoxicity due to first-line anti-tuberculosis drugs: a five-year experience in a Taiwan medical centre.
Int J Tuberc Lung Dis. 2013 Jul;17(7):934-9.
背景:
ファーストラインの抗結核薬による肝障害は重要な合併症であるものの、経時的解析による試験はなされていない。
デザイン:
2006年から2009年までに肺結核と診断された患者をレトロスペクティブに抽出した。抗結核薬治療中の肝障害、症状のある肝トランスアミナーゼの正常上限3倍以上の増加あるいは無症状での5倍以上の増加とした。肝障害のリスク因子は経時的Cox回帰分析によって検証した。
結果:
926人の患者が同定され、4122.9人・ヶ月(person-months:pm)フォローアップされた。治療開始から中央日数で38日目に111人(12.0%)が肝障害を起こした。そのうち、3.5%が重篤な肝障害であった。もっともよくみられた症状は、全身倦怠感と食欲不振だった。
100pmあたりの肝障害はイソニアジド、リファンピシン、ピラジナミドでそれぞれ0.59, 0.69, 3.71だった。
高齢、女性、自己免疫性疾患、HIV感染症、直近8-14日の間でピラジナミドを服用していた日数が多いこと、直近15-21日でリファンピシンを服用していた日数がすくないことが肝障害の独立リスク因子であった。


結論:
ピラジナミドはファーストラインの抗結核薬で最も肝障害を起こす。リスクの高い患者では抗結核薬の調整を慎重に行い、定期的な肝トランスアミナーゼのモニタリングが必要であろう。