ブデソニド/ホルモテロール(シムビコート)とフルチカゾン/サルメテロール(アドエア)の肺炎リスクに差!?
2013年 06月 11日

COPDに対する合剤の肺炎リスクを検証したスウェーデンの試験です。アストラゼネカ主導の試験ですので、解釈には注意が必要です。COPD患者さんで肺炎を起こすことはしばしばありますが、使用している製剤での差は実感したことがありません。コンプライアンスという点では個々の製剤ごとに”合う”、”合わない”はあると思います。
ちなみに、SMART療法については個人的には保留の立場です。
Janson C et al.
Pneumonia and pneumonia related mortality in patients with COPD treated with fixed combinations of inhaled corticosteroid and long acting β2 agonist: observational matched cohort study (PATHOS)
BMJ 2013;346:f3306.
目的:
COPD患者で2つの異なるステロイド/長時間作用型β2刺激薬(LABA)の合剤を吸入している患者の肺炎と肺炎に関連するイベントの発症について調べた。
デザイン:
観察レトロスペクティブペアワイズコホート試験。傾向スコアによる1:1マッチでコントロール症例を抽出。スウェーデンの各病院をリンクしているプライマリケア診療録データを参照(1999年から2009年)
患者:
主治医によってCOPDと診断され、ブデソニド/ホルモテロール(シムビコート®)あるいはフルチカゾン/サルメテロール(アドエア®、セレタイド®)を処方されたもの。
アウトカム:
年間肺炎発症率、肺炎による入院、死亡。
結果:
9893人の患者がマッチングに適格であった(2738人がフルチカゾン/サルメテロール群、7155人がブデソニド/ホルモテロール群)。これらの患者のうち、2115人(39%)が試験期間中に少なくとも1回の肺炎を発症した。19170人年のフォローアップ中に2746エピソードが記録された。
ブデソニド/ホルモテロールと比較すると、肺炎発症率および入院は有意にフルチカゾン/サルメテロールで高かった:リスク比1.73 (95%信頼区間1.57 to 1.90; P<0.001)、1.74 (1.56 to 1.94; P<0.001)。100人年あたりの肺炎イベント発症率は、フルチカゾン/サルメテロールとブデソニド/ホルモテロールではそれぞれ11.0 (10.4 to 11.8) vs 6.4 (6.0 to 6.9)であり、入院率は7.4 (6.9 to 8.0) vs 4.3 (3.9 to 4.6)だった。

肺炎による平均入院期間は両群とも同等であったが、肺炎による死亡率はフルチカゾン/サルメテロール群で高かった(97死亡 vs 52死亡)(ハザード比1.76, 1.22 to 2.53; P=0.003)。総死亡率は両群で有意差はなかった(ハザード比1.08, 0.93 to 1.14; P=0.59)。

ディスカッション:
・フルチカゾンの免疫抑制の効果は、ヒト肺胞マクロファージの抑制の観点からブデソニドよりも高いと言われている(Allergy 1999;54:691-9.)。そのため製剤によって差が出たのではないか。
結論:
COPD患者における吸入ステロイド薬とLABAの合剤は肺炎や肺炎関連イベントのリスクを上昇させるが、合剤の種類によっては差がみられた。
by otowelt
| 2013-06-11 09:48
| 気管支喘息・COPD