肺ブルセラ症の臨床的検討

肺ブルセラ症の臨床的検討_e0156318_10592759.jpg ブルセラ症は一度も診療したことがありません。

Hakan Erdem, et al.
RESPIRATORY SYSTEM INVOLVEMENT IN BRUCELLOSIS: THE RESULTS OF THE KARDELEN STUDY
Chest. 2013. doi:10.1378/chest.13-0240


背景:
 ブルセラ症における呼吸器系の病変はまれな合併症である。われわれは、肺ブルセラ症の患者の臨床的特徴を記載した。

方法:
 10年におよぶレトロスペクティブ試験において、トルコの27施設でブルセラ症で呼吸器系の病変を有した患者を登録した。適格基準は、1.呼吸器症状を有すること、2.放射線学的に呼吸器系の病変を指摘できること、3.ブルセラを直接あるいは間接的に証明できること、標準試験管凝集反応は1:160以上のタイターであること。

結果:
 肺ブルセラ症133人のうち、67人が男性、123人(92.5%)が急性感染症(2ヶ月以内のものと定義)を呈した。有症状期間(±SD)は平均33.9日(±8.5日)だった。
 肺病変の放射線学的パターンは、コンソリデーション/大葉性肺炎が91人(68.4%)にみられ、胸水は41人(30.8%)にみられた。また、30人(22.5%)がその両方を有していた。さらに、23人(17.3%)の患者は気管支炎(1人は肺炎も合併)、10人(7.5%)は肺結節影(1人は肺炎と胸水を合併)を有していた。
 血液培養は119人のうち56人で陽性であった。喀痰検体はすべて陰性で、胸水検体を採取された19人中2人(10.5%)でブルセラ症の診断がついた。
 骨関節病変といったほかのブルセラ症の特徴は61人(45.9%)にみられ、59人(44.4%)は肝トランスアミナーゼが上昇、59人(44.4%)は血小板減少を呈していた。15人(11.3%)の患者はICUの管理を要した(平均3.8日入室)。全患者は標準的な抗菌薬併用療法(ドキシサイクリン+リファンピシン)をブラセラ症に対しておこない、死亡者はいなかった。しかし、7人で抗菌薬の変更調整が必要であった。
肺ブルセラ症の臨床的検討_e0156318_1056424.jpg
(文献より引用)

結論:
 呼吸器に病変をきたすブルセラ症はまれだが、適切な抗菌薬によって良好な予後を得ることができる。肺ブルセラ症考慮すべき病歴、臨床的特徴、ベースラインの血液検査は数多くあるため参考にしてもらいたい。


by otowelt | 2013-08-07 11:05 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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