糖尿病パラドクス:糖尿病の存在はARDSの発症を抑制する
2013年 09月 03日
肥満パラドクスならぬ、糖尿病パラドクスとでも呼びましょうか。
●肥満パラドクス
・ERS2012:肥満は肺炎の死亡率を低下させる一因かもしれない
・肥満パラドクス:市中肺炎において肥満は死亡率を減少させる
・肥満パラドクス:重症患者において肥満は死亡率を減少させる
以下、今回の論文です。Discussionにも書かれていますが、糖尿病がARDSの発症を抑制するメカニズムは不明と書いています。肥満パラドクスのときもそうでしたね。可能性として、サイトカインリリースが減少すること(Diabet Med 1997; 14:29–34)、
Yu, Shun, et al.
Role of Diabetes in the Development of Acute Respiratory Distress Syndrome
Critical Care Medicine, 19 August 2013, in press.
目的:
糖尿病は急性呼吸促迫症候群(ARDS)の発症を抑制するという報告が一部にある。そのため、われわれは糖尿病とARDSの関連性を調べ、この関連が糖尿病の型やARDSの疫学、糖尿病治療内容、その他の潜在的交絡因子によって修飾されるのかどうか検証した。
方法:
多施設共同プロスペクティブ観察試験である。4つの成人ICUでおこなわれた。3860人の敗血症、肺炎、外傷、誤嚥、大量輸血によるARDSリスクのある重症患者を登録した。
結果:
糖尿病は患者の25.8%に存在した。糖尿病は単変量解析においてARDSの発症リスクを減少させた(オッズ比0.79、95%信頼区間0.66-0.94)。同様に、多変量解析においてもARDSの発症リスクを減少させた(補正オッズ比0.76、95%信頼区間0.61-0.95)。糖尿病の治療内容を加えたモデルであっても、糖尿病の存在はARDSに対して予防的に働いた(補正オッズ比0.75、95%信頼区間0.59-0.94)。また糖尿病は、敗血症患者のサブグループ(補正オッズ比0.77、95%信頼区間0.61-0.97)、非感染性の原因(補正オッズ比0.30、95%信頼区間0.10-0.90)でもARDS発症を抑制した。 (文献より引用)
また、1型糖尿病であっても2型糖尿病であってもこの抑制効果は有意に確認された。
なお、ARDSを発症した患者の間では、糖尿病は単変量解析および多変量解析のいずれにおいても60日死亡率とは関連していなかった(単変量オッズ比1.11、95%信頼区間0.80-1.52、多変量補正ホッズ比0.81、95%信頼区間0.56-1.18)。
結論:
糖尿病はARDSの低い発症と関連していた。この関連性は様々な補正後であっても有意なものであった。
●肥満パラドクス
・ERS2012:肥満は肺炎の死亡率を低下させる一因かもしれない
・肥満パラドクス:市中肺炎において肥満は死亡率を減少させる
・肥満パラドクス:重症患者において肥満は死亡率を減少させる
以下、今回の論文です。Discussionにも書かれていますが、糖尿病がARDSの発症を抑制するメカニズムは不明と書いています。肥満パラドクスのときもそうでしたね。可能性として、サイトカインリリースが減少すること(Diabet Med 1997; 14:29–34)、
Yu, Shun, et al.
Role of Diabetes in the Development of Acute Respiratory Distress Syndrome
Critical Care Medicine, 19 August 2013, in press.
目的:
糖尿病は急性呼吸促迫症候群(ARDS)の発症を抑制するという報告が一部にある。そのため、われわれは糖尿病とARDSの関連性を調べ、この関連が糖尿病の型やARDSの疫学、糖尿病治療内容、その他の潜在的交絡因子によって修飾されるのかどうか検証した。
方法:
多施設共同プロスペクティブ観察試験である。4つの成人ICUでおこなわれた。3860人の敗血症、肺炎、外傷、誤嚥、大量輸血によるARDSリスクのある重症患者を登録した。
結果:
糖尿病は患者の25.8%に存在した。糖尿病は単変量解析においてARDSの発症リスクを減少させた(オッズ比0.79、95%信頼区間0.66-0.94)。同様に、多変量解析においてもARDSの発症リスクを減少させた(補正オッズ比0.76、95%信頼区間0.61-0.95)。糖尿病の治療内容を加えたモデルであっても、糖尿病の存在はARDSに対して予防的に働いた(補正オッズ比0.75、95%信頼区間0.59-0.94)。また糖尿病は、敗血症患者のサブグループ(補正オッズ比0.77、95%信頼区間0.61-0.97)、非感染性の原因(補正オッズ比0.30、95%信頼区間0.10-0.90)でもARDS発症を抑制した。
また、1型糖尿病であっても2型糖尿病であってもこの抑制効果は有意に確認された。
なお、ARDSを発症した患者の間では、糖尿病は単変量解析および多変量解析のいずれにおいても60日死亡率とは関連していなかった(単変量オッズ比1.11、95%信頼区間0.80-1.52、多変量補正ホッズ比0.81、95%信頼区間0.56-1.18)。
結論:
糖尿病はARDSの低い発症と関連していた。この関連性は様々な補正後であっても有意なものであった。
by otowelt
| 2013-09-03 00:50
| 集中治療