モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
2013年 10月 12日
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756年~1791年)は、世界中で胎児教育にもしばしば使用されるくらい有名な作曲家です。ハイドンやベートーヴェンと並んでウィーン古典派三大巨匠の一人とされています。ベートーヴェンはどちらかというと近代寄りの作風なので、ひとくくりにすると違和感を感じますが。モーツァルトは神聖ローマ帝国皇室宮廷室内作曲家、神聖ローマ帝国皇室クラヴィーア教師、ヴェローナのアカデミア・フィラルモニカ名誉楽長などを務めました。
個人的にはモーツァルトの曲は、近代・ロマン派と比べてあまりメロディアスな曲風ではないため、そこまで好きというわけではありません。ただ、ピアノ協奏曲の完成度はいずれも高いと思っています。
(ピアノ協奏曲第22番 K.482)
モーツァルトのレクイエムは、彼の死によってその作曲が中断されました。
(モーツァルトのレクイエム)
モーツァルトの死因については驚くほどの説があり、いまだに不明です。Wikipediaによれば「―――症状としては全身の浮腫と高熱であったという。ウィーン市の公式記録では急性粟粒疹熱とされる。実際の死因はリウマチ熱であったと考えられている」と記載されています。
Baroni CD. The pathobiography and death of Wolfgang Amadeus Mozart: from legend to reality. Hum Pathol. 1997 May;28(5):519-21.
しかし、過去の報告を集めると死因については実に140もの説があるとされており、死因に関連のなかったものも85の併存疾患が報告されています。これらの報告のうち、憶測の域を出るものはあまり多くありません。調べた限りでは、音楽家の中で最も医学的に死因に諸説のあるのがモーツァルトです。
Karhausen LR. Mozart's 140 causes of death and 27 mental disorders. BMJ. 2010 Dec 10;341:c6789.
最終的に腎不全に陥ったであろうことは多くのコンセンサスが得られていますが、そこに至るプロセスを論じた報告はさまざまです。モーツァルトを目の敵にしていたアントニオ・サリエリがヒ素によって毒殺したという説は有名でしょう(死の間際に毒殺を自白したとされています)。当時、美顔用化粧水にヒ素が入っていたため、ヒ素の入手は容易だったと考えられます。
Hatzinger M, et al. Wolfgang Amadeus Mozart: the death of a genius. Acta Med Hist Adriat. 2013;11(1):149-58.
また、慣習的治療法として用いられていた瀉血が致死的になったのではないかという意見も多くの賛同を集めています。モーツァルトに対して瀉血が何度行われたのかわかりませんが、危険な行為であったことは明白です。
頭蓋骨には左側頭骨の骨折があったという報告もありますが、おそらく陳旧性の外傷をみているだけではないかと思いました。直接の死因になったとは考えにくいと思います。
もし毒殺でないなら、リウマチ熱から心臓弁膜症に陥り、晩年瀉血によって貧血と心不全を発症し、死亡したと考えるのが妥当な流れではないかと考えています。サリエリに毒殺されたのかどうかは、物的証拠の無い現代では証明できません。
<偉人たち>
・Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
・Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
・Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
・Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
・Clara細胞の発見者:Max Clara
・サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
・Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
・Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
・Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram
・Biot呼吸の提唱者:Camille Biot
<音楽と医学>
・プロコフィエフの死因は脳出血
・ガーシュウィンは多形膠芽腫だった?
・バッハの失明の原因は医療ミス?
・チャイコフスキーの死因はコレラか自殺か?
・モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
・ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
・ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
・ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒
個人的にはモーツァルトの曲は、近代・ロマン派と比べてあまりメロディアスな曲風ではないため、そこまで好きというわけではありません。ただ、ピアノ協奏曲の完成度はいずれも高いと思っています。
モーツァルトのレクイエムは、彼の死によってその作曲が中断されました。
モーツァルトの死因については驚くほどの説があり、いまだに不明です。Wikipediaによれば「―――症状としては全身の浮腫と高熱であったという。ウィーン市の公式記録では急性粟粒疹熱とされる。実際の死因はリウマチ熱であったと考えられている」と記載されています。
Baroni CD. The pathobiography and death of Wolfgang Amadeus Mozart: from legend to reality. Hum Pathol. 1997 May;28(5):519-21.
しかし、過去の報告を集めると死因については実に140もの説があるとされており、死因に関連のなかったものも85の併存疾患が報告されています。これらの報告のうち、憶測の域を出るものはあまり多くありません。調べた限りでは、音楽家の中で最も医学的に死因に諸説のあるのがモーツァルトです。
Karhausen LR. Mozart's 140 causes of death and 27 mental disorders. BMJ. 2010 Dec 10;341:c6789.
最終的に腎不全に陥ったであろうことは多くのコンセンサスが得られていますが、そこに至るプロセスを論じた報告はさまざまです。モーツァルトを目の敵にしていたアントニオ・サリエリがヒ素によって毒殺したという説は有名でしょう(死の間際に毒殺を自白したとされています)。当時、美顔用化粧水にヒ素が入っていたため、ヒ素の入手は容易だったと考えられます。
Hatzinger M, et al. Wolfgang Amadeus Mozart: the death of a genius. Acta Med Hist Adriat. 2013;11(1):149-58.
また、慣習的治療法として用いられていた瀉血が致死的になったのではないかという意見も多くの賛同を集めています。モーツァルトに対して瀉血が何度行われたのかわかりませんが、危険な行為であったことは明白です。
頭蓋骨には左側頭骨の骨折があったという報告もありますが、おそらく陳旧性の外傷をみているだけではないかと思いました。直接の死因になったとは考えにくいと思います。
もし毒殺でないなら、リウマチ熱から心臓弁膜症に陥り、晩年瀉血によって貧血と心不全を発症し、死亡したと考えるのが妥当な流れではないかと考えています。サリエリに毒殺されたのかどうかは、物的証拠の無い現代では証明できません。
<偉人たち>
・Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
・Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
・Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
・Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
・Clara細胞の発見者:Max Clara
・サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
・Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
・Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
・Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram
・Biot呼吸の提唱者:Camille Biot
<音楽と医学>
・プロコフィエフの死因は脳出血
・ガーシュウィンは多形膠芽腫だった?
・バッハの失明の原因は医療ミス?
・チャイコフスキーの死因はコレラか自殺か?
・モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
・ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
・ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
・ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒
by otowelt
| 2013-10-12 00:17
| コラム:医学と偉人