ジェームズ・ボンドのセリフ「ステアではなくシェイクで」はアルコールによる手の振戦を意味する?

ジェームズ・ボンドのセリフ「ステアではなくシェイクで」はアルコールによる手の振戦を意味する?_e0156318_22363095.jpg これもクリスマスBMJ。ジェームズ・ボンドの作品を読み漁って、アルコール消費量を検証した論文です。

Graham Johnson, et al.
Were James Bond’s drinks shaken because of alcohol induced tremor?
BMJ2013;347doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f7255


目的:
 イアン・フレミングによる「ジェームズ・ボンド」シリーズにおけるジェームズ・ボンドのアルコール消費量を定量化すること。

デザイン:
 レトロスペクティブ文献レビュー。

研究場所:
 本研究の著者の家のゆったりとした椅子。

参加者:
 ジェームズ・ボンド(007)、イアン・フレミング。

アウトカム:
 ボンドの1週間あたりのアルコール消費量。

方法:
 2人の著者によってジェームズ・ボンドシリーズ14作品が読まれた。アルコールが摂取されるたびにその記録がとられた。事前に規定したアルコール単位レベルが消費量計算に用いられた。また、監禁などでボンドがアルコールが摂取できない日数も記録した。
ジェームズ・ボンドのセリフ「ステアではなくシェイクで」はアルコールによる手の振戦を意味する?_e0156318_22211147.jpg
(文献より引用:アルコール消費量単位)

結果:
 ボンドが飲酒できなかった日を除外すると、彼の週あたりのアルコール消費量は92単位だった。1日あたりの最高アルコール消費量は49.8単位であった(『ロシアから愛をこめて』From Russia, With Love (1957)の3日目)。アルコールを摂取できる87.5日のうち、フリーの日にはボンドは12.5単位しか摂取しなかった。

結論:
 ジェームズ・ボンドは複数のアルコール関連疾患や早期死亡のリスクを高めるほどのアルコール摂取をしていた。本の中で記されたほどの量を飲んでおれば、これほどの身体的、精神的、性的な活動性は健常人であれば困難ではないだろうか。われわれはボンドに対して更なるアセスメントと治療を即座に行い、アルコール消費量を安全なレベルまで減少させることをすすめる。「Vodka Martini, Shaken, not stirred」(ウォッカ・マティーニ、ステアではなくシェイクで)という有名なセリフは、彼はアルコールによる手のふるえによってアルコールをかき混ぜること(ステア)ができなかったことを意味するのかもしれない。


by otowelt | 2013-12-16 15:09 | その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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