肺動脈性肺高血圧症に対するシルデナフィルは臨床的効果はあるものの死亡率減少には寄与せず

肺動脈性肺高血圧症に対するシルデナフィルは臨床的効果はあるものの死亡率減少には寄与せず_e0156318_9102283.jpg ご存知と思いますが、レバチオ®はcGMP特異的ホスホジエステラーゼ5に対する選択的阻害薬です。ホスホジエステラーゼ5阻害作用により肺動脈平滑筋を弛緩し、肺動脈圧を減少させることができます。すでにバイアグラ®の商品名で男性勃起不全治療薬として承認を取得しています。
 レバチオ®とバイアグラ®の関係は、アドシルカ®とシアリス®の関係と同じですね。セットにして覚えておきましょう。

Rong-chun Wang, et al.
Efficacy and safety of sildenafil treatment in pulmonary arterial hypertension: a systematic review
Respiratory Medicine, in press.


背景:
 肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対してシルデナフィルを12週間以上使用した場合の安全性と効果を評価することが本研究の目的である。

方法:
 PAH患者に対するシルデナフィル治療のランダム化比較試験を2013年5月までPubMed, the Cochrane Library, Embase, 信頼できるウェブサイト・研究などから抽出した。2人のレビュアーが独立して研究の質を評価しデータを抽出した。

結果:
 メタアナリシスは4試験545人の患者で実施された。92.6%がWHO機能分類IIあるいはIIIであった。また、71%が特発性のPAHと診断されていた。
 シルデナフィル治療はプラセボと比較して臨床的なPAHの悪化を有意に抑制した(リスク比0.39, 95% 信頼区間0.21 to 0.69)。また6分間歩行距離(平均差31.3 m, 95%信頼区間18.01 to 44.67)、 WHO機能分類、血行動態的パラメータ、QOLを改善した。
 しかしながら、シルデナフィルは総死亡率(リスク比0.29, 95%信頼区間0.02 to 4.94)やBorgスケールには寄与しなかった。
肺動脈性肺高血圧症に対するシルデナフィルは臨床的効果はあるものの死亡率減少には寄与せず_e0156318_932010.jpg
(文献より引用:上から臨床的悪化、総死亡率、6分間歩行距離)

 4試験のみ組み込まれており、出版バイアスについてはアセスメントできず。

結論:
 12週間以上のPAHに対するシルデナフィル治療は、複数の臨床的・血行動態的アウトカムを改善したが、死亡率や重篤な有害事象には寄与しなかった。PAHに対するシルデナフィルの長期的効果と安全性はさらなる研究が望まれる。


by otowelt | 2014-01-30 00:53 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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