アジア人の非小細胞肺癌におけるBRAF遺伝子変異の頻度は1.3%

アジア人の非小細胞肺癌におけるBRAF遺伝子変異の頻度は1.3%_e0156318_21243678.jpg アジア人の肺癌におけるBRAF遺伝子変異の報告です。BRAF V600E変異のある悪性黒色腫に対しては、BRAF阻害薬であるベムラフェニブが有効であるとされていますね。

Kinno T, et al.
Clinicopathological features of nonsmall cell lung carcinomas with BRAF mutations.
Ann Oncol. 2014 Jan;25(1):138-42.


背景:
 近年、チロシンキナーゼ遺伝子のdriver mutationがいくつかの悪性腫瘍で同定されており、肺癌も例外ではない。しかしながらBRAF変異肺癌に関しての情報はまだ少ない。

方法:
 2001人の外科的に切除された非小細胞肺癌の患者について、サンガー法およびディープシークエンシングといった次世代シークエンサーを用いたあと高解像度融解曲線分析(HRMAによってBRAF遺伝子変異を同定した。

結果:
 BRAF変異は2001人中26人(1.3%)で同定された(腺癌:25人、扁平上皮癌:1人)。26人のうち計13の遺伝子変変異が同定され、V600Eは8人(30.8%)、G464Eは6人(23.1%)、K601Eは4人(15.4%)、その他の変異が1例みられた。このうち、G464E、G596R、A598T、G606Rは今まで肺癌で報告されていない変異だった。
 生存期間はBRAF野生型とV600E変異あるいは非V600E変異との間に有意差はみられなかった(それぞれP=0.49、P=0.15)。組織形態学的には巣状明細胞変化がV600Eの75%にみられた。またV600E変異にはEGFRおよびKRAS変異がなく、ALK転座もみられなかった。5人の非V600E BRAF変異例(4人のG469A、1人のG464E/G466R)にはEGFR変異がみられた。

結論: 
 肺癌におけるBRAF遺伝子変異の頻度はアジア人コホートでは低かった。さらに、BRAF遺伝子変異はこの集団において予後予測には有用とは言えない。


by otowelt | 2014-01-21 11:50 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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