Dr. Houseのドラマによって診断できたコバルト中毒の一例

 Dr. Houseは私も好んでよく見ていました。極めてレベルの高い医療ドラマですね。日本でもああいったドラマを放送できるようになって欲しいものです。

Kirsten Dahms, et al.
Cobalt intoxication diagnosed with the help of Dr House
The Lancet, Volume 383, Issue 9916, Page 574, 8 February 2014
Dr. Houseのドラマによって診断できたコバルト中毒の一例_e0156318_159387.jpg
 2012年5月のことだった、55歳の男性がわれわれのクリニックに重症心不全のために紹介されてきた(NYHA IV度)。彼のBNPは1053 ng/Lにまで上昇しており(正常値<55 ng/L)、心エコー検査でEFは25%にまで低下していた。彼は人工股関節手術以外に大きな既往歴はないが、付け加えるとするならば、彼は聴覚障害と視力障害があること、甲状腺機能低下症、逆流性食道炎を有していた。心臓カテーテル検査では、冠動脈疾患は否定的であり、心筋症が心不全の原因ではないかと考えた。彼の縦隔および鼠径リンパ節は腫大していた。
 彼は2010年11月に、傷ついたceramic-on-ceramicの人工関節からmetal-on-polyethyleneの人工関節に再置換されていた。われわれが医学生の講義で用いているDr. Houseシリーズの中に、これらの症状に合致する例を検索したところ、シーズン7第11話に合致するものがあった(Season 7 #11 FAMILY PRACTICE)。それがコバルト中毒である。われわれは股関節の放射線学的検査とコバルトとクロムの測定を行った。その結果、血液検査においてコバルトとクロムが極度に上昇していた(それぞれ正常値の1000倍、100倍)。われわれは、2,3-ジメルカプトプロパン-1-スルホン酸ナトリウムによる治療を導入した。そして新しいセラミック製の人工股関節に再々置換をおこない、植込み型除細動器を挿入した。置換術時、残存セラミック片によって人工関節頭はひどく傷ついていた。
 置換術ののち患者のコバルトおよびクロム濃度は低下し、患者は回復した。しかしながら、彼の聴覚障害・視力障害はほとんど回復しなかった。


by otowelt | 2014-02-13 00:42 | 内科一般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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