
松本正孝ら.
イソニアジドを用いた肺結核治療における血中ビタミンB6 濃度の推移
日呼吸誌 3(1),2014, 56-61.
背景:
イソニアジド(isoniazid:INH)投与にて血中ビタミンB6(VB6)濃度が低下することが知られているが、実臨床における検討は十分ではない。
方法:
2012年10月15日から2013年2月15日までに、西神戸医療センター結核病棟に肺結核治療目的で入院した患者を対象とした。INH服用前、2、4週後の血中VB6濃度を測定し、末梢神経障害の有無についても調査した。INHの投与量は、全例において5mg/kgとした。患者の食事量は、身長からbody mass index 22 kg/m2となるように標準体重を算出し、その標準体重にストレス度別エネルギー必要量30 kcal/kg をかけたものを1日の必要エネルギー量とし、それに準じた病院食を提供した。
結果:
VB6血中濃度は、入院時には14例中10例で正常値以下であり、INH服用2、4週後ともに、必要栄養量を満たす食事摂取下においてもさらに低下する傾向が確認された。末梢神経障害については、脊柱管狭窄症の患者1例で服用開始前より両上下肢末梢のしびれの自覚があったが、全例において、両上下肢末梢の触覚低下は認められなかった。
結論:
肺結核患者におけるピリドキサール血中濃度は、入院時より正常値以下である症例が多かった。また、入院後、食事摂取量が有意に増加しているのにもかかわらず、INH内服により血中ピリドキサール値がさらに低下する傾向が確認された。
今後、INH投与時におけるVB6補充療法の必要性について、多施設でのランダム化比較試験が望まれる。