ICU入室を要する重症COPD急性増悪に対して高用量ステロイドは不要

ICU入室を要する重症COPD急性増悪に対して高用量ステロイドは不要_e0156318_142145100.jpg COPD急性増悪に対するステロイドは重症例には否定的な研究が増えてきました。ERJでも先月報告されていますね。

重症COPD急性増悪に対する全身性ステロイド投与はICU死亡率を改善させない

Tyree H Kiser, et al.
Outcomes Associated with Corticosteroid Dosage in Critically Ill Patients with Acute Exacerbations of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Articles In Press


背景:
 COPD急性増悪で入院になる患者に対するステロイドの量を評価した研究は多くがICU入室を要しない非重症群であり、またステロイドの量が死亡率に与える影響を調べた研究はない。

目的:
 ICU入室を要するCOPD急性増悪患者において、低用量と高用量のステロイドを効果と安全性の観点から比較検討すること。

方法:
 473施設で行われた大規模研究である。COPD急性増悪でICU入室を余儀なくされステロイド治療を導入した患者(2003年1月1日~2008年12月31日まで)を対象とした。ステロイドは入院2日以内に開始したものとする。患者は低用量ステロイド群(メチルプレドニゾロン1日あたり240mg以下)あるいは高用量ステロイド群(メチルプレドニゾロン1日あたり240mg超)に分類された。
 プライマリアウトカムは院内死亡率とした。

結果:
 17239人が登録され、6156人(36%)が低用量ステロイド群、11083人(64%)が高用量ステロイド群に分類された。傾向スコアマッチおよび共変数補正後、低用量ステロイドは死亡率減少と関連していなかった(オッズ比0.85; 95%信頼区間0.71- 1.01; p = 0.06)。しかし、在院日数(-0.44日; 95%信頼区間-0.67, -0.21; p < 0.01)、ICU在室日数(-0.31日; 95%信頼区間-0.46, -0.16; p<0.01)、コスト(-2559ドル; 95%信頼区間-4,508ドル, -609ドル; p=0.01)、人工呼吸器装着期間(-0.29日; 95%信頼区間-0.52 to -0.06; p=0.01)、インスリン治療必要性(22.7% vs. 25.1%, p<0.01)、真菌感染症(3.3% vs. 4.4%, p<0.01)は改善させた。

結論:
 COPD急性増悪でICUに入室した3分の2の患者は高用量ステロイド治療されており、これはアウトカム悪化を招き、副作用を増加させた。ICUに入室となった患者には低用量ステロイドを用いるべきであり、(今後の)臨床試験は適切な量のステロイドで検討すべきであろう。


by otowelt | 2014-04-22 00:05 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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