特発性肺線維症におけるフィブリン-1は有用なバイオマーカー

特発性肺線維症におけるフィブリン-1は有用なバイオマーカー_e0156318_14223095.jpg 疾患増悪時のみならず、将来の予測が可能なバイオマーカーの存在は極めて重要だと思います。

Jade Jaffar, et al.
Fibulin-1 predicts disease progression in patients with idiopathic pulmonary fibrosis
Chest. 2014. doi:10.1378/chest.13-2688


背景:
 特発性肺線維症(IPF)の根本的な機序についてはよくわかっていない。この進行性の疾患は高い死亡率を有し、その進行と死亡を類推することが可能な予測モデルは限られている。われわれは、以前にフィブリン-1がIPFの線維化に寄与することを報告している(Experimental Biology and Medicine 2008;233:109-122)。フィブリン-1は、肺胞隔壁を構成する上で必要不可欠な糖タンパクであり、肺の線維芽細胞から産生される(Journal of Histochemistry & Cytochemistry 1995; 43:401-411)。

方法:
 この研究は3つのコンポーネントから構成される。まずIPF患者あるいは呼吸器疾患を有さない参加者の血清および肺組織のフィブリン-1値が測定された。次に線維芽細胞を培養し、フィブリン-1産生能を観察した。最後に血清フィブリン-1が疾患増悪のバイオマーカーとして有用かどうかを検証した。

結果:
 呼吸器疾患を有さない参加者と比較して、IPF患者では血清フィブリン-1値が上昇していた(p=0.006)。さらに、組織フィブリン-1値についてもIPF患者で増加しており(p=0.02)、これは呼吸機能と逆相関がみられた(r=-0.9, p<0.05)。
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(文献より引用:血清フィブリン-1値の比較)
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(文献より引用:血清フィブリン-1と呼吸機能との関連)

 IPFのない参加者と比較するとIPF患者では線維芽細胞からのフィブリン-1産生が多かった(p<0.05)。
 血清フィブリン-1値は有意に1年以内のIPFの疾患増悪を予測した(AUC 0.71, 95%CI 0.57 – 0.86, p=0.012)。
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(文献より引用)

結論:
 フィブリン-1はIPFの増悪を予測する有用な潜在的バイオマーカーである。


by otowelt | 2014-06-10 00:10 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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