Biot呼吸の提唱者:Camille Biot
2014年 07月 26日
呼吸器内科医にとって、Biot(ビオー)呼吸はCheyne-Stokes呼吸と並んで有名な人名を冠する異常呼吸の1つです。Biot呼吸は、回数・リズム・深さがすべて不規則で、呼吸を意識させないと呼吸が停止してしまうことがあります。主に延髄の病変によってみられ、髄膜炎でも観察されます。Cheyne-Stokes呼吸は規則的に増減がみられる異常呼吸です。「何だかビオビオしてる呼吸」と医学生の頃は無理やり語呂づけて覚えていたような気がします。
Biot呼吸とCheyne-Stokes呼吸を図に表すと以下のようになります。
図. Biot呼吸とCheyne-Stokes呼吸
さて、Biot呼吸の名付け親となったCamille Biot(1850~1918年)は、Biot呼吸を解説したフランスの医師です。26歳という若さですでに呼吸パターンの調査を発表しており、Cheyne-Stokes呼吸を呈して患者のうち、典型例ではない不規則な呼吸パターンを報告しました。結核性髄膜炎の16歳の男児の呼吸パターンのトレースでは、Cheyne-Stokes呼吸では説明のつかない波形が描かれました。 ・Biot MC. Contribution a l'etude du phenomene respiratoire de Cheyne‐Stokes. Lyon Med 1876. 23517–28, 56167.28, 56167.
・Biot MC. Etude clinique et experimentale sur la respiration de Cheyne‐Stokes. New York: Harper & Brothers, 1878
Biot呼吸は古典的には髄膜炎の呼吸様式として報告されていますが、現代では致死性家族性不眠症における呼吸パターンとして有名になりました。
Casas-Méndez LF, et al. Biot's breathing in a woman with fatal familial insomnia: is there a role for noninvasive ventilation? Clin Sleep Med. 2011 Feb 15;7(1):89-91.
Biotはリオンで研修医として研鑽を積んだあと、マコンの町で生涯臨床に携わったそうです。私は主にオンラインで偉人たちのバイオグラフィーをひも解くことが多いのですが、このBiotに関しては詳しい生涯を記した文献は見つかりませんでした。他の偉人のように輝かしい表舞台で活躍した医師ではないのかもしれません。
Wijdicks EF. Biot's breathing. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007 May; 78(5): 512–513.
<偉人たち>
・Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
・Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
・Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
・Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
・Clara細胞の発見者:Max Clara
・サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
・Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
・Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
・Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram
・Biot呼吸の提唱者:Camille Biot
<音楽と医学>
・プロコフィエフの死因は脳出血
・ガーシュウィンは多形膠芽腫だった?
・バッハの失明の原因は医療ミス?
・チャイコフスキーの死因はコレラか自殺か?
・モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
・ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
・ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
・ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒
Biot呼吸とCheyne-Stokes呼吸を図に表すと以下のようになります。
さて、Biot呼吸の名付け親となったCamille Biot(1850~1918年)は、Biot呼吸を解説したフランスの医師です。26歳という若さですでに呼吸パターンの調査を発表しており、Cheyne-Stokes呼吸を呈して患者のうち、典型例ではない不規則な呼吸パターンを報告しました。結核性髄膜炎の16歳の男児の呼吸パターンのトレースでは、Cheyne-Stokes呼吸では説明のつかない波形が描かれました。
・Biot MC. Etude clinique et experimentale sur la respiration de Cheyne‐Stokes. New York: Harper & Brothers, 1878
Biot呼吸は古典的には髄膜炎の呼吸様式として報告されていますが、現代では致死性家族性不眠症における呼吸パターンとして有名になりました。
Casas-Méndez LF, et al. Biot's breathing in a woman with fatal familial insomnia: is there a role for noninvasive ventilation? Clin Sleep Med. 2011 Feb 15;7(1):89-91.
Biotはリオンで研修医として研鑽を積んだあと、マコンの町で生涯臨床に携わったそうです。私は主にオンラインで偉人たちのバイオグラフィーをひも解くことが多いのですが、このBiotに関しては詳しい生涯を記した文献は見つかりませんでした。他の偉人のように輝かしい表舞台で活躍した医師ではないのかもしれません。
Wijdicks EF. Biot's breathing. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007 May; 78(5): 512–513.
<偉人たち>
・Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
・Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
・Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
・Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
・Clara細胞の発見者:Max Clara
・サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
・Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
・Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
・Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram
・Biot呼吸の提唱者:Camille Biot
<音楽と医学>
・プロコフィエフの死因は脳出血
・ガーシュウィンは多形膠芽腫だった?
・バッハの失明の原因は医療ミス?
・チャイコフスキーの死因はコレラか自殺か?
・モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
・ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
・ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
・ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒
by otowelt
| 2014-07-26 00:27
| コラム:医学と偉人