PROVHILO試験:手術中は高PEEPと低PEEPのどちらがよいか
2014年 08月 21日
IMPROVE試験では、術中も一回換気量を少なく設定した肺保護戦略の方がよいとされています。PEEPについてはどうなのかと論じたのがPROVHILO試験です。術後5日目までというアウトカム設定に少し疑問の声がありますが、興味深い報告だと思います。
The PROVE Network Investigators†for the Clinical Trial Network of the European Society of Anaesthesiology.
High versus low positive end-expiratory pressure during general anaesthesia for open abdominal surgery (PROVHILO trial): a multicentre randomised controlled trial.
The Lancet, Volume 384, Issue 9942, Pages 495 - 503, 9 August 2014
背景:
外科手術のときの全身麻酔時に人工呼吸器の設定でPEEPを高くする意義はまだ不明である。PEEPを0 cmH2O以上にすることで術後の呼吸器系合併症を減らすことができるかもしれないが、術中の循環動態の抑制や肺傷害を引き起こす可能性もある。全身麻酔下で開腹手術を受ける際に低い一回換気量で人工呼吸をおこなわれている患者において、われわれはリクルートメント手技を用いた高PEEPが術後呼吸器系合併症に対して保護的にはたらくのではないかという仮説を検証した。
方法:
ヨーロッパおよび北・南アメリカの30施設で実施されたこのランダム化比較試験において、われわれは900人の術後呼吸器合併症が高い患者(全身麻酔下で開腹手術を予定されており、一回換気量が8mL/kg)を登録した。われわれはランダムに患者をリクルートメント手技を用いた高PEEP(12cmH2O)群、同手技を用いない低PEEP(2cmH2O以下)群に割り付けた。
プライマリエンドポイントは術後の呼吸器系合併症(術後5日目まで)とした。当該エンドポイントはITT解析とした。
結果:
2011年2月から2013年1月までに447に員の患者がランダムに高PEEP群、453人が低PEEP群に割り付けられた。6人の患者が解析から除外された。高PEEP群におけるPEEP中央値は12 cmH2O(IQR 12—12)で、低PEEP群は2 cmH2O(0—2)であった。
術後呼吸器合併症は高PEEP群のうち174人(40%)、低PEEP群のうち172人(39%)に起こった(相対リスク1.01; 95%信頼区間0.86—1.20; p=0.86)。低PEEP群の患者と比較して、高PEEP群の患者は術中に低血圧や血管作動薬を必要とすることが多かった。
結論:
腹部開腹手術におけるリクルートメント手技を用いた高PEEP戦略は、術後の呼吸器合併症に保護的に寄与しなかった。術中の保護換気戦略として、リクルートメント手技を用いない低一回換気量・低PEEPを含めるべきと考えられる。
The PROVE Network Investigators†for the Clinical Trial Network of the European Society of Anaesthesiology.
High versus low positive end-expiratory pressure during general anaesthesia for open abdominal surgery (PROVHILO trial): a multicentre randomised controlled trial.
The Lancet, Volume 384, Issue 9942, Pages 495 - 503, 9 August 2014
背景:
外科手術のときの全身麻酔時に人工呼吸器の設定でPEEPを高くする意義はまだ不明である。PEEPを0 cmH2O以上にすることで術後の呼吸器系合併症を減らすことができるかもしれないが、術中の循環動態の抑制や肺傷害を引き起こす可能性もある。全身麻酔下で開腹手術を受ける際に低い一回換気量で人工呼吸をおこなわれている患者において、われわれはリクルートメント手技を用いた高PEEPが術後呼吸器系合併症に対して保護的にはたらくのではないかという仮説を検証した。
方法:
ヨーロッパおよび北・南アメリカの30施設で実施されたこのランダム化比較試験において、われわれは900人の術後呼吸器合併症が高い患者(全身麻酔下で開腹手術を予定されており、一回換気量が8mL/kg)を登録した。われわれはランダムに患者をリクルートメント手技を用いた高PEEP(12cmH2O)群、同手技を用いない低PEEP(2cmH2O以下)群に割り付けた。
プライマリエンドポイントは術後の呼吸器系合併症(術後5日目まで)とした。当該エンドポイントはITT解析とした。
結果:
2011年2月から2013年1月までに447に員の患者がランダムに高PEEP群、453人が低PEEP群に割り付けられた。6人の患者が解析から除外された。高PEEP群におけるPEEP中央値は12 cmH2O(IQR 12—12)で、低PEEP群は2 cmH2O(0—2)であった。
術後呼吸器合併症は高PEEP群のうち174人(40%)、低PEEP群のうち172人(39%)に起こった(相対リスク1.01; 95%信頼区間0.86—1.20; p=0.86)。低PEEP群の患者と比較して、高PEEP群の患者は術中に低血圧や血管作動薬を必要とすることが多かった。
結論:
腹部開腹手術におけるリクルートメント手技を用いた高PEEP戦略は、術後の呼吸器合併症に保護的に寄与しなかった。術中の保護換気戦略として、リクルートメント手技を用いない低一回換気量・低PEEPを含めるべきと考えられる。
by otowelt
| 2014-08-21 00:50
| 集中治療