アメリカではインフルエンザに対して抗ウイルス薬処方が少ない?

アメリカではインフルエンザに対して抗ウイルス薬処方が少ない?_e0156318_22395783.jpg インフルエンザの臨床試験にはてんで疎いので、イムノクロマトグラフィーと思って読んでいたら、診断はRT-PCRなのですね。ちなみに日本では、たとえ迅速キットが陰性でも臨床診断でタミフルがよく処方されている気がします。

Fiona Havers, et al.
Use of Influenza Antiviral Agents by Ambulatory Care Clinicians During the 2012–2013 Influenza Season
Clin Infect Dis. (2014) 59 (6): 774-782. doi: 10.1093/cid/ciu422


背景:
 インフルエンザの早期の抗ウイルス治療(発症から2日以内)は、インフルエンザに関連した合併症発生を減らす(かもしれない)。重症度にかかわらず、高い合併症リスクを有するインフルエンザ感染疑いの患者には早期のエンピリックな抗ウイルス治療が推奨されている(MMWR Recomm Rep 2011; 60:1–24.)。インフルエンザの外来患者で抗微生物治療を受けた者を対象とした。

方法:
 2012~2013年シーズンにおいて、アメリカの当該研究参加施設の外来を受診した患者データを解析した。7日以下の咳嗽症状を有する生後6ヶ月以上の患者を対象とした。全例インフルエンザがRT-PCRで検査された。
 原文:Respiratory specimens were tested for influenza viruses by PCR; all sites used the same assays. At 1 of the 5 network sites, study laboratory test results were provided to clinicians by email, usually within 24–48 hours of participant enrollment. PCR results were not available to clinicians at other sites, although clinicians may have had access to rapid influenza diagnostic tests or other tests not performed as part of the study protocol.
 病歴および処方情報は、診療録や処方録から得た。参加施設のうち4施設については一般抗菌薬(アモキシシリン/クラブラン酸、アモキシシリン、アジスロマイシン)の処方データも抽出した。

結果:
 急性呼吸器症状を呈した6766人のうち、509人(7.5%)が抗ウイルス薬の処方を受けた。全体のうち2366人(35%)がPCRで確定診断のついたインフルエンザであり、そのうち355人(15%)しか抗ウイルス薬の処方を受けていなかった。
アメリカではインフルエンザに対して抗ウイルス薬処方が少ない?_e0156318_22201567.jpg
(文献より引用)

 合併症の高リスクと考えられる患者(2歳未満や65歳以上、慢性疾患を有する患者)1021人においても抗ウイルス薬を処方されたのは195人(19%)にとどまった。
 上述した3種類の抗菌薬の処方頻度については、1825人中540人(30%)と抗ウイルス薬よりは高率に処方されていた(vs 16%)。

結論:
 インフルエンザに対して抗ウイルス薬が有効と考えられる患者においても抗ウイルス薬はあまり処方されておらず、むしろ抗菌薬が処方されることが多かった。


by otowelt | 2014-08-29 00:50 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー