市中肺炎・医療ケア関連肺炎に対するGram染色は高い特異度を有し、標的治療に有用
2014年 10月 22日
たった一言。素晴らしい研究です。
Fukuyama H, et al.
Validation of sputum Gram stain for treatment of community-acquired pneumonia and healthcareassociated pneumonia: a prospective observational study
BMC Infectious Diseases 2014, 14:534
背景:
市中肺炎(CAP)に対する喀痰Gram染色の有用性については議論の余地がある。また、医療ケア関連肺炎(HCAP)の患者に対するこの手技の診断的価値を評価した報告はない。この研究の目的は、CAP・HCAPの患者において喀痰Gram染色の病原診断や標的治療に対する有用性を評価することである。
方法:
われわれは2010年8月から2012年7月までに沖縄県立中部病院に入院した肺炎患者に対してプロスペクティブ観察試験を実施した。入院時に抗菌薬を投与する前に、訓練されたレジデントによって、得られた喀痰に対して迅速にGram染色を実施された。喀出困難な患者は、看護師が経鼻カテーテルによって喀痰を採取した。Gram染色の喀痰検体の質を解析した。また、Gram染色に基づいた病原微生物法的治療を経験的治療と比較した。単一の菌によるものと判断できない検体はpolymicrobialとした。
肺炎の診断は、胸部レントゲン写真上新たな浸潤影の出現がみられ、下気道感染症を示唆する所見(発熱、咳嗽、喀痰、呼吸困難感、胸痛)があるものと定義された。
結果:
670人の肺炎患者のうち、328人がCAP、342人がHCAPであった。喀痰検体は591人の患者から得られ、このうち478検体は良質の検体であった。HCAPの患者の方が有意にpolymicrobialパターンが多く、喀痰検体は不良であった。
喀痰Gram染色の感度・特異度は、肺炎球菌に対して感度62.5%、特異度91.5%、インフルエンザ桿菌に対して感度60.9%、特異度98.2%、Moraxella catarrhalisに対して感度68.2%、特異度96.1%、Klebsiella pneumoniaeに対して感度39.5%、特異度98.2%、緑膿菌に対して感度22.2%、特異度99.8%、黄色ブドウ球菌に対して感度9.1%、特異度100%という結果だった。 (文献より引用) (文献より引用)
すでに抗菌薬を投与されている患者や誤嚥性肺炎が謳われる患者では診断能は低下した。病原微生物標的治療は、経験的治療と比較して、副作用を減少させたまま(p=0.049)同等の効果をもたらした。また、標的治療はICU入室率(p=0.017)や在院日数(p<0.001)が低かった。
結論:
CAP・HCAPに対する喀痰Gram染色は高い特異度を有し、病原微生物の標的治療をすすめる上で有用である。
limitations:
・単一施設研究であること(Gram染色のメッカとも言える病院で、limitationとは思いませんが)
・非定型病原菌についての評価が不十分であること
・ランダム化比較試験でないこと
Fukuyama H, et al.
Validation of sputum Gram stain for treatment of community-acquired pneumonia and healthcareassociated pneumonia: a prospective observational study
BMC Infectious Diseases 2014, 14:534
背景:
市中肺炎(CAP)に対する喀痰Gram染色の有用性については議論の余地がある。また、医療ケア関連肺炎(HCAP)の患者に対するこの手技の診断的価値を評価した報告はない。この研究の目的は、CAP・HCAPの患者において喀痰Gram染色の病原診断や標的治療に対する有用性を評価することである。
方法:
われわれは2010年8月から2012年7月までに沖縄県立中部病院に入院した肺炎患者に対してプロスペクティブ観察試験を実施した。入院時に抗菌薬を投与する前に、訓練されたレジデントによって、得られた喀痰に対して迅速にGram染色を実施された。喀出困難な患者は、看護師が経鼻カテーテルによって喀痰を採取した。Gram染色の喀痰検体の質を解析した。また、Gram染色に基づいた病原微生物法的治療を経験的治療と比較した。単一の菌によるものと判断できない検体はpolymicrobialとした。
肺炎の診断は、胸部レントゲン写真上新たな浸潤影の出現がみられ、下気道感染症を示唆する所見(発熱、咳嗽、喀痰、呼吸困難感、胸痛)があるものと定義された。
結果:
670人の肺炎患者のうち、328人がCAP、342人がHCAPであった。喀痰検体は591人の患者から得られ、このうち478検体は良質の検体であった。HCAPの患者の方が有意にpolymicrobialパターンが多く、喀痰検体は不良であった。
喀痰Gram染色の感度・特異度は、肺炎球菌に対して感度62.5%、特異度91.5%、インフルエンザ桿菌に対して感度60.9%、特異度98.2%、Moraxella catarrhalisに対して感度68.2%、特異度96.1%、Klebsiella pneumoniaeに対して感度39.5%、特異度98.2%、緑膿菌に対して感度22.2%、特異度99.8%、黄色ブドウ球菌に対して感度9.1%、特異度100%という結果だった。
すでに抗菌薬を投与されている患者や誤嚥性肺炎が謳われる患者では診断能は低下した。病原微生物標的治療は、経験的治療と比較して、副作用を減少させたまま(p=0.049)同等の効果をもたらした。また、標的治療はICU入室率(p=0.017)や在院日数(p<0.001)が低かった。
結論:
CAP・HCAPに対する喀痰Gram染色は高い特異度を有し、病原微生物の標的治療をすすめる上で有用である。
limitations:
・単一施設研究であること(Gram染色のメッカとも言える病院で、limitationとは思いませんが)
・非定型病原菌についての評価が不十分であること
・ランダム化比較試験でないこと
by otowelt
| 2014-10-22 00:03
| 感染症全般