入院を要する市中肺炎に対する全身性ステロイド投与は臨床的安定性をはやめる

入院を要する市中肺炎に対する全身性ステロイド投与は臨床的安定性をはやめる_e0156318_16271270.jpg 欧米のブログを見ていると、早くもこの試験が注目を浴びているようです。試験期間がべらぼうに長いです。

Claudine Angela Blum, et al.
Adjunct prednisone therapy for patients with community-acquired pneumonia: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial
Lancet, Published Online: 18 January 2015


背景:
 全身性ステロイドを市中肺炎の治療に加えることの利益については議論の余地がある。われわれは、入院市中肺炎の患者に対して短期のステロイド治療が臨床的に安定してするまでの期間を減らすことができるかどうか調べた。

方法:
 この二重盲検多施設共同ランダム化プラセボ対照試験において、18歳以上の市中肺炎の患者をスイスの7施設から登録した。患者はランダムに1:1にプレドニゾン50mg/日あるいはプラセボを7日間投与する群に割り付けられた。プライマリエンドポイントは臨床的な安定(バイタルサインが少なくとも24時間安定)までの日数とした。

結果:
 2009年12月1日から2014年5月21日までの間、2911人の患者が登録され、785人がランダム化された。392人がプレドニゾン群、393人がプラセボ群。臨床的に安定するまでの期間の中央値はプレドニゾン群の方が有意に短かった(3.0日、95%信頼区間2.5-3.4 vs. 4.4日、95%信頼区間4.0-5.0、ハザード比1.33、95%信頼区間1.15-1.50, p<0·0001)。
 30日目までの肺炎関連合併症については両群とも差はみられなかった(プレドニゾン群11人[3%]、プラセボ群22人[6%]、オッズ比0.49 [95%信頼区間 0.23–1.02]; p=0.056)。プレドニゾン群はインスリンを要する入院中の高血糖の頻度が有意に多かった(プレドニゾン群76人[19%] vs プラセボ群43人[11%]; オッズ比1.96, 95%信頼区間1.31–2.93, p=0.0010)。ステロイドによるその他の有害事象はまれであり、両群とも差はみられなかった。

結論:
 入院を要する市中肺炎の患者に対する7日間のプレドニゾン治療は合併症を増加させることなく臨床的な安定をはやめる。


by otowelt | 2015-01-28 00:13 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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