母体への微量栄養素の補充は小児の呼吸機能に有意な効果もたらさず

母体への微量栄養素の補充は小児の呼吸機能に有意な効果もたらさず_e0156318_171732.jpg さすがに長期的な効果は見込めないと思います。

Delan Devakumar, et al.
Effects of antenatal multiple micronutrient supplementation on lung function in mid-childhood: follow-up of a double-blind randomised controlled trial in Nepal
ERJ February 19, 2015 ERJ-01889-2014


背景:
 ネパール人女性における出生前の複数の微量栄養素の母体への補充は、鉄と葉酸のみを補充した場合と比較して出生体重や出生後2年の児の体重を増加させることがランダム化比較試験で報告されている(Lancet 2008;371: 492–499.)。われわれはさらにフォローアップをおこない、児の7~9歳の呼吸機能に与える影響を報告する。
 なお、1日あたりの栄養素は以下の通り。

・微量栄養素:ビタミンA 800 μg, ビタミンE 10 mg, ビタミンD 5 μg, ビタミンB1 1.4 mg,ビタミンB2 1.4 mg, ナイアシン18 mg, ビタミンB6 1.9 mg, ビタミンB12 2.6 μg, 葉酸400 μg, ビタミンC 70 mg, 鉄30 mg, 亜鉛15 mg, 銅2 mg, セレン65 μg, ヨウ素150 μg
・鉄と葉酸のみ:鉄60 mg、葉酸400 μg

方法:
 841人の小児(コホートの80%)、平均年齢8.5±0.4歳が対象となった。技術的にデータが得られたのは793人(94.3%)だった。そのうちの50%が複数の微量栄養素群に割り付けられた児童であった。小児の背景、成長については両群とも同等であった。

結果:
 呼吸機能は両群とも同等であ、zスコアにおける平均差(95%信頼区間)は、1秒量、努力性肺活量、1秒率でそれぞれ−0.08 (−0.19–0.04), −0.05 (−0.17–0.06), −0.04 (−0.15–0.07)であった。健康な白人の小児と比べると、健康なネパール人小児の1秒量、努力性肺活量はzスコアで~1(~13%)低かった。
母体への微量栄養素の補充は小児の呼吸機能に有意な効果もたらさず_e0156318_1713565.jpg
(文献より引用)

結論:
 ルーチンの鉄および葉酸の補充と比較して、複数の微量栄養素を妊娠中に補充しても、8.5歳時点のネパール人の小児の呼吸機能に影響は与えなかった。


by otowelt | 2015-03-10 00:45 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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