
田内俊輔ら.
肺癌手術での術中胸腔内洗浄細胞診に用いる洗浄液量に関する検討
日本呼吸器外科学会雑誌, Vol. 29 (2015) No. 1 p. 11-14
背景:
非小細胞肺癌手術での術中胸腔内洗浄細胞診(Pleural lavage cytology:PLC)は予後因子として重要な役割を果たす.しかし,その洗浄手技は確立されておらず,一定の方法がない.今回,PLCを施行する際に使用する洗浄液の量に関しての検討を行った.
方法:
対象は2008年11月から2011年5月までの非小細胞肺癌手術症例で,開胸直後に生理食塩水を洗浄液として用い,5 ml, 100 mlの順でPLCを行った.それぞれの洗浄液中の腫瘍細胞の検出率を検討した.
それぞれの採取方法別にPLC 陽性率を求め,その一致性の評価はκ 係数を求めて行った。
結果:
期間中のPLC施行例は435例,腫瘍細胞陽性例は40例(9.2%)であった.そのうち5 mlの洗浄液で腫瘍細胞を認めた症例は36例(8.3%),100 mlの洗浄液では38例(8.7%)に認め,検出率に差は認めなかった(κ係数=0.9114).
因みに1986年から2007 年までのPLC 陽性率のretrospectiveな検討でも100 ml と5 ml では有意差は認めていない。
結論:
PLCにおいて使用する洗浄液の量は少量でも検出率を損なうことなく施行しうると考えられた.