INSIGHTS-IPFレジストリにおける2011年IPFガイドラインの実臨床報告
2015年 04月 14日
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Jürgen Behr, et al.
Management of patients with idiopathic pulmonary fibrosis in clinical practice: the INSIGHTS-IPF registry
ERJ Published online before print April 2, 2015, doi: 10.1183/09031936.00217614
背景:
2011年の特発性肺線維症(IPF)の国際ガイドラインの登場により、われわれは医師の診断によるIPF患者の実地の臨床的マネジメントについて調べることとした。これはドイツで実施されたプロスペクティブ多施設共同研究である(INSIGHTS-IPFレジストリを用いた)。
方法:
患者は18歳以上で現行の国際的ガイドラインあるいはドイツのガイドラインに基づいてIPFと診断された患者のうち、同意を取得できたものを登録した。実地臨床に基づくデータの取得のため、また選択バイアスの除外のため、非適格基準を明確には規定しなかった。
ベースラインのデータ、患者背景、リスク因子、合併症などが抽出された。本研究ではさらに疾患の経過、診断方法、現在あるいは過去の治療内容、非薬物療法の使用などについても調べた。
結果:
連続した502人のIPF患者(171人は新規診断、331人は既に診断済、平均年齢68.7±9.4歳、77.9%が男性)を登録し、平均2.3±3.5年の観察をおこなった。
環境曝露は136人の患者(全体の27.1%)にみられた。そのうち、石綿が56人、金属粉塵が25人、鳥が19人、木材粉塵が16人、溶剤が18人であった。興味深いことにIPFは平均して禁煙後21.3年で発症しており、現喫煙者はわずか1.0%であった。合併症は頻繁にみられ、過体重/肥満(47.8%/26.5%)が多かった。心臓の超音波検査では86人(17.2%)に肺高血圧症がみられた。しかしながら、そのうち右心カテーテルを受けたのは52人のうち実際に肺高血圧症があったのは27人(52%)だけだった。
GAPスコアで分類すると、ステージIが21.8%、ステージIIが56.9%、ステージIIIが21.3%だった。
症状は、呼吸困難感(85.9%)、咳嗽(74.7%)がよくみられた。ばち指は17.9%にみられた。聴診では79.0%にcracklesが聴取された。
HRCTに基づいて診断されたのは452人(90.2%)だった。ATS/ERS基準で、UIPパターンに合致したのは75.6%、possible UIPパターンが23.7%、非UIPパターンは0.7%だった。組織は171人(34.1%)の患者で採取されており、中央値で登録1.6年前(IQR 0.3–3.5年前)に実施されていた。データがなかった1人を除く170人の患者のうち、UIPパターンが141人(82.9%)、possible UIPパターンが14人(8.2%)、非UIPパターンが3人(1.8%)だった。HRCTと生検の両方を実施されたのは154人だった。この群では、HRCTはUIPパターン62.8%、possible UIPパターン37.2%と報告されている。inconsistent UIPパターンはゼロだった。現行のガイドラインに基づいて診断されたとしても、外科的肺生検の頻度が多いことは驚きに値する。
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6分間歩行距離の中央値は320m(平均268±200m)だった。平均努力性肺活量は予測値の72±20%で、DLCOは35±15%だった。
薬物療法を受けていない患者が17.9%いた。薬物療法としては、経口ステロイド23.7%、N-アセチルシステイン33.7%、ピルフェニドン44.2%、他の薬剤4.6%という内訳であった。肺移植を受けたのはこのコホートのうち2.8%だった。
結論:
IPF患者は2011年の国際ガイドラインに基づいて診断されている。近年のランダム化比較試験に登録されている患者よりも、実臨床ベースでみた場合の重症度は高そうである。HRCTに加えて、肺生検を受けている患者が驚くほど多かった。治療選択にはばらつきがみられた。
by otowelt
| 2015-04-14 00:09
| びまん性肺疾患