成人市中肺炎に対する抗菌薬はβラクタム系抗菌薬単独治療でよいか?

成人市中肺炎に対する抗菌薬はβラクタム系抗菌薬単独治療でよいか?_e0156318_10461784.jpg 市中肺炎を診すぎて、最近悩むことが増えてきました。

Douwe F. Postma, et al.
Antibiotic Treatment Strategies for Community-Acquired Pneumonia in Adults
N Engl J Med 2015; 372:1312-1323


背景:
 臨床的に市中肺炎(CAP)を疑い、ICUではない一般病棟に入院した患者への経験的抗菌薬治療の選択は、エビデンスが乏しい。経験的治療戦略としてβラクタム系抗菌薬の単独治療、βラクタム系抗菌薬+マクロライド系抗菌薬併用治療、フルオロキノロン系抗菌薬単治療を比較した。

方法:
 90日死亡率について、βラクタム系抗菌薬単独治療戦略の、βラクタム+マクロライド併用およびフルオロキノロン単剤に対する非劣性を検証する目的でおこなわれた試験である。3つの戦略プランを4ヶ月ごとに変更していくクラスター無作為化クロスオーバー試験である。解析はITT、非劣性マージン3%ポイント、両側 90%信頼区間を用いた。

結果:
 βラクタム系抗菌薬単独治療戦略に656人、βラクタム+マクロライド併用治療戦略期間に739人、フルオロキノロン単独治療戦略期間に888人が登録された。戦略の遵守はそれぞれ93.0%、88.0%、92.7%だった。
 登録患者の年齢中央値は70歳だった。90日死亡率は、それぞれ9.0%(59人)、11.1%(82人)、8.8%(78人)だった。ITT解析において、死亡リスクはβラクタム+マクロライド併用治療戦略ではβラクタム系抗菌薬単独治療戦略よりも1.9%ポイント高く(90%信頼区間-0.6~4.4)、フルオロキノロン単独治療戦略ではβラクタム系抗菌薬単独治療戦略よりも0.6%ポイント低かった(90%信頼区間-2.8~1.9)。
 これらの結果から、βラクタム系抗菌薬治療戦略の非劣性が示された。
 全戦略において入院期間中央値は6日であり、経口投与開始までの期間(中央値)は、フルオロキノロン単独治療戦略3日(IQR0~4)、それ以外では4日(IQR3~5)だった。

結論:
 臨床的にCAPを疑いICU以外の一般病棟に入院した患者に対して推奨される経験的抗菌薬治療として、βラクタム系抗菌薬の単独治療は、90日死亡率について、βラクタム系抗菌薬+マクロライド系抗菌薬併用治療およびフルオロキノロン系抗菌薬単独治療と比較して非劣性であった。


by otowelt | 2015-04-09 00:24 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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