ATS2015:肺動脈径/大動脈径比の上昇はIPFの予後不良因子

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 GAPスコアについてはびまん性肺疾患を診療されている方はご存知と思いますが、そのパフォーマンスについてはまだまだ改善の余地があると言われています。

H.T. Duong, et al.
Pulmonary Artery Diameter to Aortic Diameter Ratio Predicts Mortality in Idiopathic Pulmonary Fibrosis
ATS2015, B25, Poster Discussion Session


背景:
 特発性肺線維症(IPF)は進行性の予後不良疾患であるが、その生存や予後を予測する因子を同定する研究は不足している。胸部CTによって測定される肺動脈(PA)径・大動脈(A)径の比は肺高血圧の存在と関連している。肺高血圧症はIPFの死亡の増加と関連しているとされている。そこで、われわれはPA/A比がIPFの死亡予測因子として妥当かどうか検証した。

方法:
 レトロスペクティブにIPFと診断された患者を登録した。胸部CTおよび呼吸機能検査を受けていることを条件とした。PA径はPA分岐部で測定され、A径も同じスライスで測定するものとした。プライマリアウトカムは死亡までの期間とした。GAPスコアに対してPA/A比の追加的効果があるかどうかなどを調べた。

結果:
 147人の患者が生存解析に登録された。平均年齢は69.3±8.5歳で、75%が男性だった。全生存期間は中央値で4年だった。PA/A比は有意にDLCOが低い患者、CT線維化スコアが高い患者、酸素療法を受けている患者、生存期間の短い患者と関連していた。年齢、性別、努力性肺活量、DLCOによる補正後においても、PA/A比は死亡を予測する独立因子であった。GAPスコアに追加的にPA/A比評価を組み込むことで予後推定能が向上した。
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(Abstractより引用)

結論:
 PA/A比はIPFの死亡を強く予測する因子である。GAPスコアの予後推定能に加えることで有用である。


(補足)
 類似の発表があるので要チェックです。

S. Shin, et al.
Utilization of Pulmonary Arterial Size and Coronary Artery Calcification on HRCT Imaging for Prognostic Stratification in Patients with IPF
ATS2015, B25, Poster Discussion Session


H. Kiyokawa, et al.
PA/A Ratio (the Ratio of Pulmonary Artery Diameter to Aortic Artery Diameter) as a Prognostic Predictor and Longitudinal Impact of Exacerbations on PA/A Ratio in COPD Patients
ATS2015, B34, Thematic Poster Session



by otowelt | 2015-05-19 07:34 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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