ATS2015:COPD急性増悪に対する妥当なメチルプレドニゾロン量は?

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 私も、妥当な量を知りたいと長らく思っています。

T.H. Kiser, et al.
Corticosteroid Dosing for Acute Exacerbations of Chronic Obstructive Pulmonary Disease Requiring Ventilatory Support
ATS2015, B23, Poster Discussion Session


背景:
 全身性ステロイド投与は、COPD急性増悪で入院した患者に対する最も重要な治療の1つである。しかしながら、人工呼吸管理を要する患者を含め、その適正な量についてはわかっていない。この研究の目的は、人工呼吸管理を要するCOPD急性増悪で入院した患者の臨床試験で用いられてたステロイド量を記載し、それが臨床試験の計画に妥当性のあるリサーチクエスチョンかどうか検証した。

方法:
 人工呼吸を要するCOPD急性増悪を起こした患者の臨床に携わる2つのネットワーク(the United States Critical Illness and Injury Trials Group [USCIITG] 、 the Prevention and Early Treatment of Acute Lung Injury Trials Network [PETAL])内で集中治療医に対するサーベイをおこなった。医師は以下に対する意見を求められた。
1) この患者群における1日あたりのステロイド量(メチルプレドニゾロン相当)
2) 人工呼吸を要するCOPD急性増悪の患者に対するステロイド量を評価するための臨床試験の必要性
3) 異なるステロイド量レジメンを臨床試験に用いるとして、容認できる最高用量
4) 異なるステロイド量レジメンを臨床試験に用いるとして、容認できる最低用量

結果:
 32人の医師がサーベイに回答した。回答者のCOPD急性増悪に対するメチルプレドニゾロンの通常使用量は40~500mg/日であり、中央値は120mg/日だった。
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(Abstractより引用)

 81%の医師が240mg/日以下から開始し、19%の医師が240mg/日超から開始すると回答した。94%の医師は、これらの患者群における妥当なステロイド量を検証するための臨床試験の必要性があると答えた。臨床試験で用いるレジメンを想定する場合、78%の医師が最低でも40mg/日の用量が必要で、88%の医師は最大は240mg/日ないし500mg/日の用量と回答した。

結論:
 このサーベイから得られたことは、以下のことである
1) 人工呼吸管理を要するCOPD急性増悪に対するステロイドの現行使用量にはメチルプレドニゾロン換算で40~500mg/日とバラつきがある。
2) 妥当な用量を調べる臨床試験が必要である
3) 臨床試験として妥当なステロイド量は、最低でも40mg/日、多くても250mg/日あるいは500mg/日と答える医師が多かった。


(補足)
別のセッションで、高用量ステロイドはその合併症の観点から推奨されないという発表をしている研究グループもあります。

Y.C. Yeh, et al.
Factors Influencing Initial Steroid Dose Selection and Subsequent Adverse Events in Patients Hospitalized for Exacerbations of COPD
ATS2015, B25, Thematic Poster Session



by otowelt | 2015-05-19 12:19 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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